Point
■皮膚の外から血中循環腫瘍細胞を見つけて除去するレーザー光線のテストに成功
■血中循環腫瘍細胞の数がわずかであってもそれを探知し、レーザー光線でそれらを破壊することが可能に
■新装置は、1時間あたり1リットルの血液をスキャンできる
血管やリンパに入り込み、別の臓器や器官に移動して増えるがん細胞。
University of Arkansas for Medical Sciences (UAMS)のチームが、血液中に循環しているがん細胞を皮膚の外から見つけて除去できるレーザー光線のテストに成功した。
雑誌「Science Translational Medicine」に掲載された論文の著者ウラジミル・ジロフ氏によると、この技術は皮膚内や体内への器具挿入無しに、がん転移の進行を著しく抑制できるという。
https://stm.sciencemag.org/content/11/496/eaat5857
わずかな数の血中循環腫瘍細胞を探知
がん細胞にこのレーザー光線を照射すると、通常の細胞よりもずっと多くのエネルギーを吸収する。その際に発生した熱が、がん細胞を膨張させ、崩壊させるのだ。
従来のレーザー光線によるがんの診断や治療は、光線のサイズが大きいために細胞レベルでの利用は困難だった。
がんによる死亡の多くは、血中循環腫瘍細胞 (circulating tumor cells, CTCs) が主な腫瘍から他の組織へ転移することで起きている。今回開発された装置の根本には、がんが身体中に転移する前に殺そうという考え方がある。
従来の方法ではCTCsの正確な測定は難しく、治療可能な段階でCTCsが見落とされるケースが多かった。
そこで研究チームは、悪性黒色腫の患者に直接使用可能な光音響を利用した装置を開発。これによりCTCsの数がわずかであってもそれを探知し、レーザー光線でそれらを破壊することが可能になった。