Point
■キッチンスポンジは様々な微生物たちがしのぎを削るバトルフィールド
■そこには人の糞便に潜む感染菌も、細菌に取り付くウィルス『バクテリオファージ』も存在している
■抗生物質耐性菌が問題視される昨今、台所用スポンジの中から危険な感染菌を食い殺す強力なバクテリオファージを見つけ出そうとする研究が発表された
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/37913
正しく使えば細菌を一掃できる抗生物質。しかし医者の言うことを聞かず適当に使っていると、毎日細菌に雑魚モンスターを与えてレベル上げさせているのに近い状況になってしまう。
細菌の病から人類を救った抗生物質だが、そんな雑な利用によって抗生物質耐性菌というものが大量に生まれ、大きな医療問題にもなっているのが現状だ。
「誰か、奴らを倒す剛の者はおらぬのか?」
そこでそんな呼びかけに、キッチンスポンジの中から「ここにいるぞ!」と声が上がったようだ。
ニューヨーク工科大学の学部生が助成金を受けて行った研究では、なんと抗生物質耐性菌を殺すバクテリオファージを、台所用スポンジというありふれたアイテムの中から見つけ出す提案をしている。
この研究はニューヨーク工科大学の学生グループより発表され、アメリカ微生物学会ASM Microbe2019で発表されている。
https://www.asm.org/Press-Releases/2019/June/The-Solution-to-Antibiotic-Resistance-Could-Be-In
耐性パラメータがカンストしてる細菌

細菌は様々な感染症の原因となるが、現代は抗生物質のおかげで以前ほど恐れる存在ではなくなってきた。
しかし、細菌たちにとって恐ろしい抗生物質も、不規則に利用し続けると、少しずつ彼らを鍛えて慣れさせているような状況になってしまう。
安易な抗生物質の乱用や、医者の言いつけを守らない患者たちの雑な利用により、細菌たちはどんどんとレベルアップしていき、最終的にはステータスがカンストした強靭な『抗生物質耐性菌』になってしまうのだ。
これは医療の現場においても大きな問題となっている。
このため、新しい抗生物質が次々と生み出されているが、結局は細菌とのイタチごっこ状態なのだ。
これに対抗するための新しい発想が、細菌に感染するウィルスである『バクテリオファージ』の手を借りるというものである。正に敵の敵は味方の発想だ。
ただし、いくら細菌にしか感染しない種類とはいえ、ウィルスの手を借りて体の中の悪玉菌を殺すというのは、諸刃の刃の様にも感じてしまうだろう。しかし現在、これは抗生物質耐性菌への有用な対策だと考えられている。
問題は「そんなバクテリオファージをどうやって見つけ出すのか?」ということだが、そのための有効な手段がキッチンスポンジの中にあるというのだ。