神経制御で存在しない物を見ているマウス
今回の実験ではマウスが、水平線、または垂直線を見た際に活性化される脳のニューロンを調べ、該当の神経をピンポイントでレーザー照射し神経細胞の活性を試みた。
マウスは、もともと水平線などを見た場合、その線の先にある注ぎ口から水を飲むように訓練されている。
そして、何も見えない暗闇の状態で、水平線(あるいは垂直線)を見たとき活性化するニューロンへレーザー照射を行ったのだ。
すると何も視覚的な情報の入力がない状態にも関わらず、マウスは確かに線を見てその先にある注ぎ口の水を飲んだのだという。
これは人工的な脳への刺激によって、他のニューロンが連鎖的に反応し、脳の視覚に関わる部分が本物の視覚同様に反応したことを示唆している。
研究者のDeisseroth教授は、同様の手法を用いれば、匂いや感触、味など他の知覚を人工的に作り出すことも可能だと語っている。
さらに、この手法を発展させていけば、より複雑なニューロンの集合体を制御することも可能になるだろうという。それはこの手法を使って、記憶を取り扱うことも十分に可能な話しということだ。
脳に電極を埋め込む様な研究に比べると、こちらの分野の発展に期待したくなってくる。
この手法が確立されれば、ウィルスベクターを投与しさえすれば、あとは脳内にレーザー光を届けるヘッドギアのような物をかぶるだけで自由に知覚を操作できるようになる可能性があるのだ。
そのうち、『PS Optogenetics』的なものが発売されるかもしれない。