Point
■充電可能な鉄イオン電池が開発された
■現在普及しているリチウムイオン電池には、安全面・環境面でさまざまな課題がある
■鉄イオンの酸化還元電位はリチウムイオンを上回り、鉄は充電中にデンドライト状にならずショートしにくい
リチウム電池に代わる、新時代の電池の登場です。
インド工科大学マドラス校の研究チームが、リチウムイオン電池に代わる充電可能な「鉄イオン電池」の開発に成功しました。
詳細は8月2日付けで「Chemical Communications」に掲載されています。
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2019/cc/c9cc04610k#!divAbstract
リチウムイオン電池が抱える多くの問題
リチウムは環境への負荷は高いものの、電気自動車をはじめ、スマートフォン、ガラスセラミック、エアバッグの作動にいたるまでさまざまな製品に使用されており、まさに引っ張りだこの状態です。
採掘自体にはさほど費用は掛からないリチウムですが、別の大きな問題点が存在します。
海水中のリチウムに到達するために、その周囲を覆う海水を蒸発させる必要があるのです。1トンのリチウムを得るために必要な水の量は、15,000トン以上にも上ります。さらに、岩から掘り出すためには、環境に有害な化学物質を使用しなければなりません。
このようにリチウムは「環境に優しい製品を作るために、環境に負荷を掛ける」という致命的ジレンマを抱えています。リチウムイオン電池に代わる新たな電池の開発が急がれる中、研究チームはこれまで見落とされてきた「鉄」に白羽の矢を立てました。