効率も安全性もリチウムイオン電池を上回る
研究チームによると、鉄はリチウムに似た物理化学的特性を持つだけでなく、鉄イオンの酸化還元電位はリチウムイオンを上回り、鉄イオンのイオン半径はリチウムイオンと肩を並べる程度に小さいというメリットが存在します。酸化還元電位とは、ある物質が電子を放出したり、受け取ったりする際に発生する電位のことです。
研究チームが開発した鉄イオン電池は、管理された条件下で150サイクルの充電と放電に耐えました。また、50サイクル後も54%の容量を保持し、見事な安定性を示しました。
リチウムと違って鉄は、充電中にデンドライト状(金属などの溶融液が凝固して生じる樹状結晶)にならず、安定して保たれるため、ショートしにくい性質を持ちます。このため、コストを大幅に抑え、より安全に取り扱えるようになるのです。
研究チームは、次のステップとして、鉄イオン電池のパフォーマンスのさらなる改善を計画しています。課題の1つが、陰極(外部の負荷から正電荷が戻る方の電極)の問題です。電池の中には陰極の入れ替えが可能なものも存在しますが、鉄の場合はそれができません。
研究チームは現在、陰極に結びつく鉄イオンの量を増やすため、さまざまな金属酸化物を使って試作を繰り返してているところです。より多くの鉄イオンを陰極に結びつけることができれば、より多くのエネルギーを電池内に蓄えることができ、パフォーマンスの上昇が期待できます。
リチウムイオン電池に代わる次世代の電池を追い求める国際競争は、ますます激化していきそうです。