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「海水と淡水が混じる場所」でエネルギーを生む電池が開発される

2019.08.01 Thursday

米サンタモニカ湾を臨む廃水処理工場「Hyperion Water Reclamation Plant」 / Credit: Doc Searls/Flickr

Point

■海水と淡水が入り混じる場所で発生するエネルギーを使って、莫大な量の再生エネルギーを生み出す電池が開発された

■廃水と海水が急速に交換することで電流の向きが切り替わり、そのたびにエネルギーが取り戻されるため、事前のエネルギー投資も充電も不要

■廃水処理工場のエネルギー自給が実現すれば、電力使用や排気を抑制できるだけでなく、停電への免疫性も高まる

塩は力なり――。

まるで錬金術のような話ですが、海水と淡水が入り混じる場所で発生するエネルギーを使って、莫大な量の再生エネルギーを生み出す電池が開発されました。

開発に携わったのはスタンフォード大学土木環境工学部の研究チーム。論文は、雑誌「ACS Omega」に掲載されています。

Charge-Free Mixing Entropy Battery Enabled by Low-Cost Electrode Materials
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsomega.9b00863

コストパフォーマンスが高く、耐久性のあるこの技術は、いわゆる「ブルーエネルギー」を動力化する鍵になりそうです。

ブルーエネルギーとは、海流同士がぶつかることで生み出された激しい潮流や高い波の力を発電に利用する構想のこと。この電池を使うことで、廃水処理工場のエネルギー自給が叶うかもしれません。

廃水処理のエネルギー自給が可能に?

研究チームは、試作品の電池を使って試験を行い、Palo Alto Regional Water Quality Control Plantという廃水処理工場から出た廃水とハーフムーンベイ近隣から集めた海水を1時間毎に交換しながら勢いよく流し、その際に発生するエネルギー生産を観測しました。

Palo Alto Regional Water Quality Control Plant / Credit: City of Palo Alto

その結果、全180回のサイクルを通じて、この電池が塩分勾配エネルギーを97%の効率性で獲得できることが示されました

この技術は海水と淡水が混ざる場所であればどこでも使用可能ですが、特筆すべきは廃水処理工場から出る廃水を利用できることが証明されたという点でしょう。また大規模化が叶えば、廃水処理にとどまらず、海水淡水化設備への応用も夢ではありません。

廃水処理は大量のエネルギーを必要とするプロセスで、米国全体の電力負荷の約3%を占めています。地域住民の健康維持に不可欠とはいえ、同時に送電網の停止を招くリスクを常にはらんでいます。

廃水処理工場のエネルギー自給が実現すれば、電力使用や排気を抑制できるだけでなく、停電に対する免疫性も高めることができます。特に、最近の山火事によって大規模停電が生じたカリフォルニアなどの地域での活用が期待されています。

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