マウスの記憶実験
今回の研究では、マウスの脳に取り付けた装置によって、MCH神経を意図的に活性化したり抑制することで記憶にどの様な変化が現れるかを実験しました。
マウスがものを覚えているかどうかなんて、どうやって確かめるんだ? と思うかも知れませんが、これにはマウスの持つ2つの特性が利用されます。
1つは、「新奇物体認識試験」と呼ばれるものです。マウスは非常に好奇心旺盛な生き物で、初めて見る物体に強い興味を示し近づいて探索します。しかし、一度覚えてしまった物体に対しては、それほど興味を示さなくなります。もし物体を見たことを忘れていると、二度目でもやはり強い興味を示します。
こうした特性を利用して、物体への接触時間を測定することで、マウスの記憶力を調べることができるのです。
2つ目は、「文脈的恐怖条件付け試験」と呼ばれる実験です。これはマウスが恐怖の記憶に反応してフリーズしてしまう性質を利用します。
ある場所で電気ショックを与えた場合、マウスは恐怖でフリーズします。そしてそれは嫌な場所の記憶としてマウスの中に残ります。しばらくして、また同じ場所にマウスを置くと、マウスは恐怖の記憶を思い出して電気ショックを与えなくてもフリーズしてしまいます。
この特性を利用して、マウスのフリーズ時間を測定することで記憶の程度が評価できるのです。