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「夢の記憶」が消えてしまうメカニズムが解明される (3/3)

2019.09.20 Friday

前ページマウスの記憶実験

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記憶を消す神経を特定する

マウスに物体(または恐怖の場所)を記憶させた後、MCH神経を活発化、または抑制して、「新奇物体認識試験」と「文脈的恐怖条件付け試験」の2つが確認されました。

その結果、MCH神経を活発化すると、マウスは一度形成された記憶を失っていることが判明したのです。これは2つの実験どちらに置いても確認されました。

さらに、「レム睡眠時」「ノンレム睡眠時」「覚醒時」のそれぞれで、MCH神経の活動を抑制させる実験を行ったところ、「レム睡眠時」にMCH神経の活動を抑制させたときのみ、マウスの記憶力が向上したのです。

これは、レム睡眠中のMCH神経の活動が、海馬の神経活動を抑制し、記憶を消去している証拠となります。

このためレム睡眠中に見る夢の記憶は、レム睡眠中に活性化するMCH神経の働きによって、定着することができず忘れてしまっていたことが明らかになったのです。

MCH神経の活動と記憶への影響。/Credit:科学技術振興機構(JST)/panoji.com

こうした機能が私達の睡眠中の記憶整理を行って、脳をリフレッシュさせているのだと考えられます。この研究が進んでいけば、睡眠中の記憶制御の全体像も解明されるかも知れません。

今回の実験では、「文脈的恐怖条件付け試験」により、マウスから恐怖の記憶さえ消去可能なことが示されています。そのため、この研究成果は、恐怖体験が辛い記憶(トラウマ)として残ってしまう心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に貢献できるのではないかと期待されています。

トラウマを消すのもいいですが、この研究を応用すれば、夢を忘れずに覚えておくことも可能なのでしょう。ちょっとそっちの方を試してみたい気もします。でも記憶の消去機能を抑制してしまうと、寝たのに全然頭がスッキリしないという副作用もあるかもしれませんね。

あと筆者個人的には、今回の科学技術振興機構のプレスリリースのやけに可愛らしい解説イラストが気になりました(ピンク髪の女の子)。科学技術振興のために、是非こういう活動も頑張っていただきたいです。

MITが夢をコントロールしてアイディアを生み出すデバイスを開発。これはまさに「夢の技術」じゃ…

reference:科学技術振興機構/ written by KAIN

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