住所を知らなくてもたどり着く方法
脳内のネットワークは、現実世界の地理のように、自然と信号が集まりやすい場所、集まりにくい場所があると考えられています。
例えば、パリでレンタカーを借りて運転した場合、凱旋門は主要な道路をずっと走っていれば偶然たどり着く可能性の高い場所です。しかし、逆にレンタカーの代理店へ偶然たどり着くことはかなり難しいでしょう。
東京の場合でも、皇居前とかスカイツリーなどは、よく場所を知らなくてもたどり着くことはそれほど難しいものではありません。しかし個人の住宅に事前の下調べもなくたどり着くことは、かなりの困難が予想されます。
今回の研究は、脳のコミュニケーションもこうした移動の問題と同様に機能している可能性を示しています。他の場所からアクセスが容易な領域は、自然と情報が集まるため「受信者」として機能するのです。
逆に、それ以外の場所は効率的に到達することが困難になります。そうした場所は「送信者」として機能しているのです。
送信者は、視覚や聴覚など、外部からの感覚情報を取り扱う最初の領域となり、このデータを脳の受信者の領域へ送信します。
こうして多くの情報が集まりやすい領域は、難しい判断を決定したり、問題解決に重要な思考をするための場として機能するのです。
人間の社会でも、都市部に人や物は集中しやすいように作られています。脳内の構造にも、これと似たようなメカニズムが存在しているのです。
この研究の成果は、脳内の配線を双方向接続と仮定したモデルから、送信者領域と受信者領域に関する知識が得られる非常に重要なものです。これによって、研究者らは、MRIスキャンのデータから脳内の配線を再構築し、神経交通を方向づけて理解できるようになりました。
人間の脳についてはまだまだわかっていないことが多く、精神疾患などの治療とも密接に関わっているようです。こうした研究成果が、人の脳機能をより良く理解するために役立ち、ひいては人の精神的な悩みを解決してくれるようになるといいですね。