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天の川銀河の中心は、すでに人類も存在した300万年前に大爆発を起こしていた

2019.10.07 Monday

Credit:James Josephides / ASTRO 3D

Point

■天の川銀河を挟み込む巨大なフェルミバブルの発生原因となる、300万年前に起こった大爆発の証拠を発見したという研究が発表された

■この衝撃は、およそ20万光年離れた大マゼラン雲から伸びる長いガスの尾「マゼラニックストリーム」にまで影響を与えている

■天の川銀河の中心は、これまで活動を終えた平穏な状態と考えられてきたが、今回の発見が事実ならば私達の銀河に対する理解に劇的な変化がもたらされるだろう

天の川銀河をはさみ込む巨大なガス球体「フェルミバブル」の謎

私達の属する天の川銀河には、その盤面を上下に挟み込むように、銀河直径と同じくらい巨大な泡構造が存在しています。

フェルミバブルと呼ばれるこの高エネルギーガスの領域は、位置的に考えて天の川銀河中心部から放射された何らかのエネルギーの残滓と考えられました。

しかしこれまでの天文学の認識では、天の川銀河の中心は既に活動を終えた平穏な状態と考えられており、フェルミバブルの存在は、私達の銀河に対する知識と矛盾しています。

そのため、フェルミバブル発生の原因は謎に包まれていたのです。

しかし最新の研究は、X線観測衛星「ROSAT」や、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡が集めた観測データから、フェルミバブルの発生原因となる証拠を発見したと発表しました。

それによると、天の川銀河中心では、約300万年前に大規模な爆発が発生していたというのです。さらにこの爆発は、約30万年間も続き、その衝撃は20万光年離れた大マゼラン雲の長いガスの軌跡「マゼラニックストリーム」にまで達して、一部を途切れたように電離させてしまったというのです。

300万年前というと、人類の祖先たるアウストラロピテクスが、アフリカに誕生したと言われる時代です。人類が既に地球上に誕生していた時代に、そんな大規模な爆発を天の川銀河が起こしていたというのは、驚愕の事実です。

この研究は、オーストラリアの研究プロジェクト「ASTRO 3D」に属するJoss Bland-Hawthorn教授を筆頭とした国際研究チームにより発表され、天文学を扱う学術雑誌「The Astrophysical Journal」に発表される予定となっています。

現在論文は、シドニー大学のプレプリントサーバーで公開中です。

眠れる獅子 天の川銀河

Credit: M. Helfenbein, Yale University / OPAC

銀河は全て、その中心に大質量ブラックホールを持っています。

このブラックホールは周囲に吸い込む物質(ガスや塵)が大量に満ちている若い時期は、活動銀河核と呼ばれる活発な状態となり、宇宙ジェットと呼ばれるエネルギーと物質の放射を行います。

宇宙ジェットのメカニズムはよく分かっていませんが、若いから可能である「暴飲暴食の果ての吐き戻し」のようなもの…ともいえます。

しかし、周囲の物質を食べ尽くすと、活動銀河核は落ち着きを取り戻し膨大なエネルギー放出を停止します。若い活動銀河を除けば、宇宙に存在する通常の銀河は皆、こうした激しい宇宙ジェットの放射を行わない平穏な状態となっています。

そのため私達の属する天の川銀河の中心も、周囲の物質を食べ尽くした平穏な状態になっていると考えられていました。

しかし、2010年に発見されたフェルミバブルが、そんな常識を覆す証拠をもたらしたのです。

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