銀河サイズの巨大な泡 フェルミバブル
フェルミバブルは、2010年にフェルミガンマ線宇宙望遠鏡が発見した高エネルギーのガス領域で、私達の銀河盤面を上下に挟み込むように存在しています。
その直径はおよそ5万光年で、銀河の直径とほぼ同サイズです。
フェルミバブルの発生した原因はこれまで不明でしたが、今回様々な観測データより、このガス領域が強くイオン化されていることを確認。そして、その原因として銀河中心から灯台のように、2極方向へ伸びるコーン型のビームが発生していたという予想を発表したのです。
これはセイファートフレア(Seyfert flare)と呼ばれる現象で、全銀河のおよそ10%程度で発生が確認されています。ただし、それはセイファート銀河(活動銀河の一種)で見られるもので、不活性と考えられていた天の川銀河での発生は想定されていないものでした。
このフレアは非常に強力なもので、その衝撃は20万光年離れたマゼラニックストリームにまで達していたと考えられています。
マゼラニックストリームは、大小マゼラン雲から伸びる中性水素(HI)ガスの軌跡です。非常に長く広がっていて、地上観測で100度ほどの広がりを持っています。
天の川銀河から放たれた電離放射線は、このマゼラニックストリームにぶつかってガスの一部を電離させており、その痕跡が確認できるというのです。
この爆発はあまりに規模が大きく、原因は太陽のおよそ400万倍の質量を持つ天の川銀河中心の大質量ブラックホール「いて座A*(いて座エースター)」以外は考えられないといいます。
さらに驚いたことに、この爆発が起きた時期はおよそ300万年前と推定されるということです。
300万年前というと、人類の祖先たるアウストラロピテクスがアフリカ大陸に誕生した時期です。人類が地球上に誕生していたような、宇宙で言えばつい最近と言える頃に、そんな大規模な爆発が銀河中心に起こっていたというのは、驚くべきことです。
こうした現象が、不活性と考えられている天の川銀河で起こっていたという証拠は、私達の知る銀河の進化や性質と大きく異なるものです。それは、銀河にまだまだ私達の知り得ない性質があることを示唆しており、銀河の進化モデルや宇宙ジェットのメカニズムについて新たな解釈を考える必要があるようです。
天の川銀河は私達が考えているよりもはるかに活動的で、活火山に住んでいるのに等しい状態かもしれないのです。
地球の位置が、こうした噴火を起こす銀河中心地殻ではなく、影響の範囲外となる辺境だったことは幸運だといえるでしょう。そうでなければ人類の祖先は、銀河中心の大噴火に巻き込まれていたかもしれません。