Point
■日本の研究チームにより、「オーロラ現象」に関する最古の記述が発見された
■記述は「アッシリアの占星術レポート」と呼ばれる紀元前8〜7世紀頃の粘土板に見つかっている
■記述によると、オーロラの発生は「紀元前660年頃」とされ、これまで最古とされた「紀元前576年」を大きく更新した
宇宙の天気現象は、時にして地球に大きな影響を与えます。特に太陽風は、地球上の電力網や通信網に被害をもたらすため、厄介な存在です。
被害を可能な限り減らすには、天気現象の発生頻度を知ることが最適。それを知る一番の近道は、過去に起きた天気現象の頻度を知ることでしょう。
中でも「オーロラ」は、太陽風が地球の磁力線に接触して起きる現象なので、良い目印となります。
今回、筑波大学、大阪大学、京都大学、名古屋大学の共同研究で、オーロラ発生に関する最古の記録がアッシリア(現在のイラク北部)の古文書(粘土板)に発見されました。
記述は紀元前660年頃のものであることが判明し、これまで最古だった「紀元前567年」という記録を100年近く更新したのです。
最古の記録は「史上最大級のオーロラ」だった?
研究チームが解析したのは、「アッシリアの占星術レポート」と呼ばれる粘土板です。紀元前8~7世紀頃に用いられたもので、観測された天体現象が楔形文字によって記されています。
天体現象が予示する地上の出来事について、占星術の観点から予測する役割を持っており、その内容は当時のアッシリア王に伝えられました。
解析対象となったのは以下の文字板であり、すべて大英博物館に所蔵されています。
粘土板の模写、楔形文字の翻訳作業により、粘土板(a)には「赤光」、そして(b)には「赤雲」という記述が確認されました。これはオーロラの発生を示すものと思われます。
オーロラの記述の他には、占星術的な観点から、その後に発生する地上の出来事を意味する内容も記されていたようです。
先に示したように、この記述がなされたのは「紀元前660年頃」のことでした。
実は、記述発見の以前に、樹木の年輪や氷床コアの分析から、「紀元前660年頃に史上最大級の太陽高エネルギー放射が起こっていた」という研究が発表されていたのです。今回の発見により、この研究結果が大きく裏付けられたと言えるでしょう。
オーロラ発生のメカニズムは、すでに現代人の知るところですが、当然アッシリアの人々は知らなかったはずです。太古の人類は夜空に波打つ光の幕を目にして、一体何を想ったのでしょうか。