巻き込まれ型のタイムトラベル
タイムトラベルを扱った神話や民間伝承はほぼすべて、主人公が受身的に時間旅行に巻き込まれる物語です。
紀元前1世紀の中東では、とあるユダヤ人労働者が、新しく植えたイナゴ豆の木の下で居眠りし、再び目覚めると70年が経っており、すっかり実が熟していたという物語が誕生しました。(イナゴ豆の木は、実が成るのに時間がかかることで有名)
これらは「時間の遅れ(time dilation)」という現象を題材にした物語です。
「時間の遅れ」は、アインシュタインが相対性理論の中で示した「双子のパラドックス」に由来するもので、「ウラシマ効果」と同じ現象と言えます。
こうした時間遅れの物語は18〜19世紀に急増し、ワシントン・アーヴィングの『リップ・ヴァン・ウィンクル(1820)』やマーク・トウェインの『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー(1889)』、ルイス・キャロルの『シルヴィーとブルーノ(1889)』などがその代表です。
しかしまだこの時代はタイムトラベルの方法が魔法的であり、ランダム性が支配していました。