同期する銀河の謎
こうした宇宙の大規模構造の証拠と目されているのが、遠く離れた天体同士の奇妙な同期です。
今回の研究者たちは、地球から4億光年離れた445の銀河について観測を実施。地球に向かって回転する銀河の多くが地球に向かって移動している一方、逆回転する銀河は地球から離れるように移動していることに気が付きました。
これは隣り合う銀河同士で見せる奇妙な一致でしたが、互いの銀河同士の距離は6メガパーセク(約2000万光年)の隔たりがあり、直接相互作用していると考えることは不可能でした。
発見者のLee氏は、これら同調した銀河が同じ大規模な構造に沿って埋め込まれるように存在しているという可能性を考えています。ただ、裏付けを取るためには、さらにもっと多くのデータが必要だと言います。
こうした遠く離れた銀河同士の奇妙な同調は、この発見に始まったことではありません。
2014年には、ベルギーのリエージュ大学の天文学者Damien Hutsemékers氏が率いる研究チームが、チリの大型望遠鏡VLTを使って、約100近いクェーサーを調査した研究を発表しました。
クェーサーとは初期宇宙に存在した非常に明るい銀河のことです。
この研究では、クェーサーから放たれる光の偏光記録からクェーサーの回転軸を調べたのですが、なんと19のクェーサーが互いに10億光年近く離れているにもかかわらず、回転軸が平行に揃っていたのです。
狭い範囲の銀河では回転軸が揃う場合があると知られていますが、10億光年という極端なスケールで回転軸が平行に揃うという事実は既存の理論では説明できません。
他にも不思議な例があります。
天の川銀河周辺の衛星銀河は、現行の宇宙論に従ったモデルのシミュレーションでは、ランダムな軌道を描くと予想されています。
ところが、観測によると天の川銀河の衛星銀河はきれいに整列した軌道を回っているように見えるのです。これはたまたま、天の川銀河になにか特殊な要因があって予想と異なっているのだ、と多くの天文学者たちは考えていました。
しかし、その後アンドロメダ銀河で、そして2015年には1000万光年離れた楕円銀河ケンタウルスAでも、衛星銀河が1つの軌道面に整然と同期していることがわかったのです。
身近な3つの銀河で予想外の観測がされたことで、天文学者たちは現行の標準的な宇宙論になにか重大な欠陥があるのかもしれないと、考え直す必要に迫られたのです。
この巨大構造の存在を証明し、奇妙な宇宙のつながりを説明するにはまだまだ観測データが足りないと言います。
衛星銀河の奇妙な同期について研究しているフランスのストラスブール大学の天文学者Oliver Müller氏は、「宇宙の研究がまだまだ開拓段階であることこそが、もっとも面白くエキサイティングだ」と語っています。
現在は大規模な新しい望遠鏡も次々と稼働し、その真価を発揮し始めています。宇宙の見えない大規模構造を探りあて、隠された天体同士のつながりを見つけ出す日は近いのかもしれません。