
Point
■約115億光年離れた遠方銀河の集団から、それぞれを繋ぐ水素ガスのネットワーク「宇宙網」を観測することに成功した
■初期宇宙においては、銀河やブラックホールの成長材料となるガスの供給路が存在すると予想されていたが、観測による確認は実現していなかった
■今回の発見は、銀河やブラックホールが例外なく宇宙網に沿って分布していることを明らかにするもので、宇宙進化の過程を解明するための重要な手がかりとなる
宇宙に浮かぶ天体の数々は、何もない空間に孤独に浮かんでいるように見えます。
しかし、銀河もブラックホールもその形成過程では多量の塵やガスを必要するため、宇宙で孤立無援に存在しているだけでは成長できません。
初期の宇宙では、こうした天体の材料となる水素ガスが、現代の道路網のように各銀河やブラックホールと繋がっていて、材料の供給されていたと考えられているのです。
これを「宇宙網(コズミックウェブ)」と呼びます。
これは理論上は存在が予想されていましたが、初期の宇宙を見るためには遥か遠方の銀河集団を観測するしか無く、非常に弱い水素の輝きを捉えて宇宙網の存在を確認することはとても困難なことでした。
今回研究を報告した国際研究グループは、世界中の大型望遠鏡を利用し、様々な波長で多様な観測を行うことで、世界で初めて遠方の銀河を結ぶ宇宙網の姿を確認することに成功しています。
この研究は、日本の理化学研究所、東京大学、国立天文台、名古屋大学、英国ダーラム大学の研究者らによる国際研究グループにより発表され、米国の科学雑誌『Science』に、10月4日付けで掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/366/6461/97
銀河を結ぶ宇宙のネットワーク

100億年以上前の太古の宇宙では、銀河が活発に生まれ育つ時代があったとわかっています。そうした初期宇宙では、私達の住む天の川銀河の数100倍から数1000倍という速さで星を生み続ける銀河も存在していました。
また、銀河の中心では太陽の約1億倍という超大質量の巨大ブラックホールが凄まじい勢いで成長していたと考えられています。
こうした初期の宇宙で銀河やブラックホールが急成長を遂げられたのは、水素を主成分としたガスが「宇宙網」と呼ばれるクモの巣状のネットワークを形成していたためと考えられています。そのガスが凝集して銀河やブラックホールを形成し急速な成長を助けたのです。
宇宙網は地球から100億光年以上離れた活発に星を生み出している銀河集団から確認できると考えられます。宇宙網を観測できれば、そこから初期宇宙の銀河やブラックホールの形成・進化の過程を解明する重要な手がかりが得られるでしょう。
しかし、宇宙網の放つ輝きは非常に微かなもので、最大の集光力を持つ望遠鏡をもってしても観測することは困難なものでした。