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有害と思われていた太陽風、実は宇宙線から太陽系を守るプラズマバリアだった

2019.11.25 Monday

Credit:NASA/Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab
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  • ボイジャー2号が太陽圏の境界となるヘリオポーズを通過し、星間領域へ飛び出した史上二番目の探査機となった
  • ヘリオポーズは太陽風と宇宙線の衝突する領域で、ボイジャー2号の観測により初めて詳細なデータが得られた
  • 観測によると、ヘリオポーズは予想の倍近い摂氏3万度の熱を持ち、宇宙線の70%をカットしている

新海誠監督の『ほしのこえ』のごとく、地球から旅立って遠くへ遠くへと離れていくボイジャー2号。1年前の2018年11月、地球から180億キロメートル離れた太陽圏と星間領域の境界となるヘリオポーズを通過しました。

ヘリオポーズとは宇宙線と太陽風がぶつかり合う境界のことです。

太陽風は太陽の放射する高熱のプラズマ(荷電粒子のガス)で、地球では人工衛星に障害を起こすなど有害な存在ですが、実はより有害で危険な宇宙線が太陽系に侵入するのを妨害してくれています。

ボイジャー2号は史上2番目に星間領域へと飛び出す人工物となり、ヘリオポーズについても多くのデータをもたらしてくれました。

最初の到達者はボイジャー1号でしたが、このときボイジャー1は計測機器が故障していてヘリオポーズの詳細なデータを得ることはできませんでした。

「Nature Astronomy」では、11月4日にそんなボイジャー2号のもたらしたデータを分析した5つの新しい研究論文を掲載しており、このヘリオポーズについても、発見された新事実について説明しています。

Voyager 2 plasma observations of the heliopause and interstellar medium
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0929-2

太陽風と宇宙線

太陽風は時速300万キロメートルもの速度で太陽系を吹き荒れ、磁場を持たない惑星の大気を消し飛ばし生命が存在することを難しくしています。

地球には磁場があるため直接被害に遭うことはありませんが、太陽風が活発になるとオーロラが発生しその影響を地上からも見ることができます。

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オーロラは太陽風の衝突で発生している。/Credit: ESA/NASA

たまに話題になる太陽嵐は、太陽が活発となって太陽風が猛烈に吹き荒れるような状況のことを指しています。磁場がなければ、地球は高熱の太陽風によって丸焦げにされてしまうと言われています。

そのため人類から見ると太陽風というのは迷惑な存在です。

しかし、太陽系の端を観測すると太陽風の別の側面が見えてきます。それが、星間領域からやってくる、もっとずっと強力な放射線である宇宙線から太陽系を保護する役割です。

太陽風の影響が及ぶ範囲を太陽圏と呼びますが、これは太陽系の惑星たちを泡のように包み込み、外からやって来る宇宙線から守っています。太陽風と宇宙線がぶつかりあう境界はヘリオポーズと呼ばれています。

Credit: NASA/Walt Feimer/Wikipedia Commons/Nesnad

ボイジャー1号が、初めてこの領域に到達したとき、太陽風が宇宙線の侵入を70%以上カットしていることを発見しました。

昨年ボイジャー2号もこのときの観測と同様に、宇宙線の劇的な増加を検出し、太陽圏を抜け星間領域に入ったことを確認したのです。

ボイジャー2号は1号と異なり計測機器の多くが有効だったため、1号で観測できなかった様々なデータをもたらしてくれました。それによって、予想とは大きく異るヘリオポーズの様子も知ることができたのです。

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