- 木星南極には五角形に並ぶ巨大な嵐が確認されていたが、最新の観測では新たに1つ嵐が発生している
- 嵐1つの大きさは米国の面積に匹敵しており、7つの嵐が占めるサイズは地球に匹敵する
- この新しい嵐はこのまま成長して、南極に六角形の嵐を形成すると考えられる
木星には、何百年も存在し続ける巨大な嵐「大赤斑」の他に、巨大な嵐がいくつも生まれては消えています。
NASAの木星探査機『ジュノー』は木星の南極に変わった嵐を発見しています。この嵐は最初の観測では1つの嵐を囲むように5つの嵐が回っている五角形の不思議な配置を作っていました。
しかし、最近の観測によると、ここに新たな7つ目の嵐が誕生していて、六角形の配置になっていたというのです。
木星の南極は太陽光線をエネルギーに活動する探査機にとっては、調査の難しい場所であり、こうした位置で生まれる嵐の調査は、太陽系の惑星に起こる嵐や、地球の低気圧の理解にも役立つといいます。
この新しい木星の嵐の発見は、米航空宇宙局NASAのサイト上で公開されています。
https://www.nasa.gov/feature/jpl/nasas-juno-navigators-enable-jupiter-cyclone-discovery
スケールの違う木星の嵐
木星の南極に出来た嵐は、最初2017年2月2日ジュノーの3回目の接近飛行で撮影された際に発見されました。なんとも毒々しい色ですが、これは赤外線による放射熱を測定して得られた画像です。
このとき撮影された嵐は、1つの嵐の周りを5つの嵐が同じ方向へ渦を巻いて回っているものでした。
しかし、2019年11月4日、木星への23回目の接近飛行により同じ場所を撮影したところ、なんとこの嵐は新たに1つ増え、六角形の配置を取っていたのです。
最初の撮影では、5つの嵐は安定した配置をしていて、新たな嵐の入り込む余地はなさそうに見えました。しかし、それはほんの数年の間に崩れ、新たな小さい嵐が誕生して仲間に加わっていたのです。
木星の嵐は、一過性のものなのか、永続的に続くものなのか、謎が深まるばかりです。
この撮影では、探査機は木星を渦巻く雲の頂点から3500キロメートルという距離まで接近して撮影を行っています。それにより、嵐の生み出す風速まで測定が行われました。
それによると新しい嵐の風速は時速362キロメートルであることが明らかとなりました。
嵐のサイズも桁違いで、前から存在する6つの嵐はそれぞれが米国に匹敵するサイズを持ち、新しい嵐はまだ小さいですが、それでもテキサス州と同じくらいの大きさがあると言います。
テキサス州の大きさと言われても、日本人にはあまりピンと来ませんが、テキサス州の面積は日本の総面積のおよそ1.8倍。
つまり、この新しい小さな嵐だけで日本を超える大きさがあります。この六角形の嵐全ての領域は、ここだけで地球と同じサイズがあるのです。スケールが大きい嵐ですね。
極点の嵐が六角形になるというのは、太陽系では必ずしも珍しいことではなく、同じ巨大ガス惑星の土星でも、北極に六角形の嵐が存在することが確認されています。
木星の北極はさらに複雑で1つの嵐を囲んで8つの嵐が回っているといいます。
これは極点の磁気環境が影響して作られていると考えられています。
こうした自然の流体と巨大な回転惑星の大気がどの様な関連で変化し機能しているのかは、観測とコンピューターシミュレーションによって徐々に明らかにされる問題です。
新たな嵐が誕生して配置が変わる南極の嵐は、これまでの木星の嵐に見られた状況や予測を裏切る新発見です。
木星の巨大な嵐。想像するだけで恐ろしいですが、こうした研究は地球の台風の解明にも役に立つのだそうです。大型台風が次々生まれる昨今。災害に対しても何か役立つ知見が得られるといいですね。