- 新しいマッピングシステムにより南極の氷の下にある地形を正確に知ることができる
- 南極の地形把握は温暖化による氷の融解被害の予測に繋がる
地球温暖化により、海面は年々上昇しています。主な原因の1つは南極大陸の氷の融解です。南極の氷がどのように溶けていくのかを知るためには、南極の氷の下に隠された地形を把握することが重要となります。
カルフォルニア大学のアーバイン率いる氷河学者チームはBedMachine Antarcticaと呼ばれる新しいマップシステムによって、南極の氷の下に隠された地形を把握することに成功しました。
調査結果はNature Geoscience誌に12月12日に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41561-019-0510-8
南極の氷の下に隠れた地形が明らかに
南極大陸の99%は氷に覆われており、肉眼では平坦な地形にしか見えません。しかし、実際には他の大陸と同じように、起伏に富んだ山脈や峡谷が隠されているのです。
最新のマップシステム「BedMachine Antarctica」は氷の動き、地震、レーダーなどさまざまなデータを組み合わせて南極の詳細な地形を予測し、画像で表現できます。
氷河の融解を加速・減速・停止させるために重要な地形を見つけることさえできるようになるのです。
例えば、新しいマップ画像によって、南極横断山脈には安定した幅広い尾根があることが分かります。周辺の氷が海に滑り込んでしまうなら破壊的な影響を与えてしまいますが、この尾根が保護となっていることが明らかになりました。
また、BedMachine Antarcticaは物理学の質量保存の手法に基づいて、レーダー探測線の間にあるものを識別することができます。この機能によって氷の流れや動きを正確に把握できるのです。
正確な氷の動きのデータと従来の調査データを組み合わせることにより、峡谷を満たしている氷の量を測ることができます。氷の量は峡谷の正確な深さを知るためには欠かせない要素です。
最近では、BedMachine Antarcticaを用いてデンマントラフと呼ばれる峡谷の数値を計測することに成功しました。海抜3500メートルという数値が計測されており、これは地球上で最も深い峡谷であることを示す数字です。
地球が温暖化するにつれて、南極の氷の流れを理解することは非常に重要になってきます。国立氷雪データセンターによると、南極の氷が全て溶けた場合、世界の海面が60メートルも上昇してしまいます。
BedMachine Antarcticaによって南極の氷の融解のリスクを予測できるなら、海面上昇への正しい対応が可能になるでしょう。