- ヘビ毒に対する世界初の血清は、1891年に誕生しており、それ以降、作り方はほとんど進歩していない
- 今回、インド国内で年間1万人の死者を出す「インドコブラ」のゲノム解析に成功、新たな血清誕生に期待が高まる
あまり知られていませんが、ヘビによる被害はかなり多く、年間で約540万人がヘビに噛まれており、その内270万人ほどが毒ヘビによるものと言われています。毒ヘビによる死者は年間10万人を超えており、切断手術や後遺障害に陥る患者はその3倍になります。
これほどの被害が出ていながら、ヘビ毒に対する医療技術はほとんど進歩していません。
しかし今回インドやアメリカの共同研究により、インドで最も危険な毒ヘビ「インドコブラ(Naja naja)」のゲノム解析に成功しました。
この結果は医療的に大きな価値があり、シンプルかつ効果的な抗毒血清の誕生が期待されています。
研究の詳細は、1月6日付けで「Nature Genetics」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41588-019-0559-8
世界最初の抗毒血清とは
ヘビ毒に対する世界最初の血清は、1891年、フランス人医師のアルベール・カルメット氏により開発されました。
カルメット氏は、狂犬病や天然痘に関するワクチン開発のため、ベトナムに医療院を開設しました。ところが、実際には毒ヘビに噛まれて運び込まれる現地住民が非常に多かったのです。
カルメット氏はその後すぐにヘビ毒の研究を開始し、ウサギにヘビ毒を注入する実験を実施。その結果、少量の毒ならウサギは体内で抗体を作り出し、毒を中和することが判明しました。
これを利用して作ったのが、世界初となるヘビ毒の血清です。
血清は体内で抗体の生産を促進します。ヘビ毒自体を退治するのではなく、毒の影響を中和し、体全体に回るのを防ぐ役目を果たします。