- 脳に直接信号を送って視覚を与える電子器具が開発された
- 器具を装着することにより、盲目の女性は文字や簡単な物の形状を把握できるようになった
私たちが見ている景色は、目ではなく脳で感じ取っているものです。
目に入ってきた光は、網膜という「変換器」によって電子に変換され、電子信号は視神経という「通路」を通って脳に伝わります。
このような視覚の仕組みからすると、理論的には、目や視神経が機能していなくても、脳に電子信号さえ伝われば視覚が得られるはずです。
そして最近、この理論がついに実証されました。
スペインのミゲルヘルナンデス大学の神経工学部のエドゥアルド・フェルナンデス氏らの研究によって、脳に直接信号を送って視力を与える脳内インプラント(脳に装着する電子器具)が開発されたのです。
このインプラントを装着することで、患者たちは全盲であっても簡単な視覚を得ることができます。
研究の詳細は、「MIT Technology Review」に掲載されました。
A new implant for blind people jacks directly into the brain
https://www.technologyreview.com/s/615148/a-new-implant-for-blind-people-jacks-directly-into-the-brain/
脳に直接信号を送る視覚インプラント
盲目の原因は「目」だけではありません。網膜と脳を繋ぐ視神経に損傷がある場合、人工の目や網膜を作成しても視力は回復しないのです。
このような患者たちも視力を取り戻せるよう、今回研究者らは脳に直接信号を送り、視覚を得させる新インプラントを開発しました。
従来の電子インプラントには、ペースメーカーや人工内耳などがあります。
人工内耳は、マイクで拾った音を電気信号に変換し、聴神経に伝える装置であり、世界中の50万人以上の患者が利用しています。
今回の新しい視覚インプラントは、人工内耳の「視覚版」と言えるものです。
小さなカメラが取り付けられた眼鏡が視覚情報を取り入れ、コンピューターを介して電子信号に変換されます。
その後、電気信号は頭蓋骨後ろの視覚野に埋め込まれた脳内インプラントへと送り込まれます。
インプラントは100本の電極から成り立っており、電極から電子信号を受け取った視覚野は、患者に視覚を与えるのです。