炒飯(チャーハン)。それは単純な料理のようで、実は非常に奥深い物理学です。
そして重い中華鍋を素早く振る動作は、料理人の肩に大きな負担をかけています。
炒飯を作る動作をモデル化して、料理人の負担を減らすことはできないだろうか? ある科学者はそう考えました。
そして彼は、チャーハンが空中を舞う挙動を分析し、数学的なモデルを構築し、炒め料理を支援するロボットや外骨格の設計に活かそうと論文にまとめました。
このチャーハン物理学論文は、ジョージア工科大学の2人の研究者によって発表され、英国王立協会が発行する査読付き学術誌『Journal of The Royal Society Interface』に2月12日付けで掲載されています。
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsif.2019.0622
チャーハンという名のレジェンド
炒め物はもともと、料理方法ではなく、ものを乾燥させるための技術として漢王朝時代に誕生しました。
炒飯はおよそ1500年前(隋の時代)に作られた料理と言われていて、中華鍋の上で食材を空中へトスすることで1200℃という高温で熱しながらも、食材を焦がすことなく調理するものです。
中華料理の炒めものが焦げることなく褐色の香ばしい仕上がりになるのは、中華鍋が1000℃以上に熱せられた際に起こる、メイラード反応に関係していると考えられてます。
しかし、この点についてはまだ定量的に調査されたことはありません。今回の研究者たちはそうした化学的な観点よりも、中華鍋の動きの基礎をなすメカニズムの解明に焦点を絞りました。
重要なのは、米を鍋に沿ってスライドさせる平行移動と、米を空中へトスさせる回転運動です。
研究者は中国レストランの5人のシェフの動きをビデオに撮影し、その反復的な動きを分析しました。
おわかりいただけただろうか。鍋の各部の動作は綺麗に円形を描き、シェフは1秒間にこの動作を3回正確に繰り返しています。
米の軌跡をシミュレートすることで、研究者はこの調理に関する重要なヒントを見つけました。
鍋の柄を揺するロッキングと鍋のスライディングの動きは完全に同期していなければなりません。そうでないと、ご飯はうまく混ざらず、焦げる危険性が高まります。
さらに鍋の動きが早くなればなるほど、ご飯は高くトスされることになり、より高い温度の調理にも耐えられるようになります。
中華鍋は重いためシェフは鍋をコンロから持ち上げることはめったにありません。代わりに単一の接触点を維持します。
これにより中華鍋の位置と角度は二重振り子(振り子の先にさらに振り子を連結したもの)として考えることができ、2つの変数のみを使用してモデル化できます。
こうして研究者は、炒飯を調理するプロの動きから数学的なモデルを作成することに成功しました。