- 材料を温める最速の方法は予冷を行うことだという研究が報告された
- 氷を作る際、熱湯を凍らせたほうが早いと主張するムペンバ効果と類似している
- 冷やすことで材料の磁性方向に変化が起きることが、原因の可能性がある
氷を作るとき、熱湯から凍らせたほうが凍るのが早い、という話を聞いたことがあるでしょうか?
これはムペンバ効果と呼ばれていて、タンザニアの高校生エラスト・B・ムペンバくんが発見した現象です。
ただ、この現象は科学にとって重要な再現性を得ることが難しく、現象が現れたり現れなかったりするため原因の特定ができていません。
新たな研究は、このムペンバ効果を直接検証しているものではありませんが、かなり類似性のある現象のメカニズムについて言及しています。
それは、物質を温める際、最初に冷やしておいたほうが、指数関数的に早く加熱が可能になるという現象です。そして、その原理について磁性が関係している可能性があると報告しています。
単純に見えて謎の多い温度変化の秘密が、これから明らかになるかもしれません。
この研究は、イスラエルのワイツマン科学研究所の物理学者A. Gal氏とO. Raz氏の共著で発表され、アメリカ物理学会から発行される査読付き学術雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に2月13日付けで掲載されています。
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.124.060602
温めますか? 冷やしますか?
「熱湯のほうが凍りやすい」、もしくは「冷やしておいたほうが効率よく温まりやすい」という主張は、直感に反した現象で、なかなか受け入れがたいものがあります。
ムペンバ効果については、再現は難しいですが確かに存在する現象として確認されています。
今回の研究者が報告する予冷を利用した加熱時間の短縮についても、数学的な検証によって確認されています。
単純に温度変化を見ていても、この現象は理解することができません。予冷を行ってから再加熱された場合と、単純に加熱した場合で、2つの系に違いは見られないからです。
この効果の原理を理解するためには、まったく別の観点から現象を見る必要があると言われています。
そこで、今回の研究者たちが注目したのは磁性でした。