木星とイオの関係
そこでヒントとなったのが、木星とその衛星イオの間にある磁気圏の相互作用です。
衛星イオから放出された火山ガスや大気中の粒子は、宇宙空間に放出された際にイオン化して木星磁気圏に捉えれプラズマトーラスという領域をイオの軌道上に作り出しています。
これは円形に偏向された電波(円偏波)を放ちます。
新しい観測方法は、磁気圏の相互作用で発生られる特殊な円偏波を検出することで、惑星の存在を見つけ出す方法です。
通常太陽の磁場はそれほど強くはなく、しかもこうした相互作用を起こすためには惑星が太陽に近くなくてはなりません。
そのため普通の恒星を中心とした星系では使えない方法ですが、この方法が役立ちそうな星系が宇宙にはあります。
それが赤色矮星を主星とする星系です。
赤色矮星は太陽のような星と、核融合しない褐色矮星の中間のような星で、暗く温度は低いですが、非常に活発なフレア活動をしていて、強い磁気圏を持っています。
この赤色矮星を中心に回る惑星の場合、距離が主星と近くても過度に加熱されることはなく、重力的な影響もそこまで大きくなりません。
そして、その強力な磁気圏内を惑星が公転する場合、木星とイオと似たような関係で相互作用を起こし、電波波長の円偏波を放つと考えられるのです。
今回の研究チームは、この推測をもとに宇宙から目的に一致した円偏波を検出しました。
こうして発見されたのが、「GJ1151」と名付けられた星です。
「GJ1151」は非常にゆっくりと回転する星で、自転周期は130日です。これは赤色矮星としては非常に穏やかな星と言えます。
ここで検出された惑星は、1~5日で公転している岩だらけの星と推定されています。質量についてはまだ未定です。
これはかなりハードな環境の惑星と考えられます。しかし、これまで検出の難しかった小型岩石惑星を、電波解析だけで発見した初の例になる可能性があります。
この観測の研究は始まったばかりですが、潜在的にハピタブル惑星を見つけ出せる新しい方法を提供していると研究者たちは語ります。
彼らの今後の目標は、磁場環境が系外惑星の居住性にどう影響するかを調べることです。
今回の研究は複数の科学雑誌でも取り上げられており、今後の新世代電波望遠鏡観測にも新しい可能性もたらすものになりそうです。
地球のような惑星が次々と見つかる日も、近いのかもしれません。