- サイロのような円筒に粒子を詰め込んだ場合、実際よりも重くなる場合があると確認された
- 実際より軽くなるヤンセン効果は古くから明らかにされていたが、重くなることが示されたのは初
- どちらも粒子と壁との摩擦が原因で、サイロの直径や詰め込んだ粒子の高さで状況が変わる
サイロのような円筒形の容器の中に、粒子状のものを大量に流し込んだだけなのに、実際よりも重くなることがあるという研究が発表されました。
おいおい、物理法則破れてんじゃん! ヒッグスじゃ! ヒッグス粒子の仕業じゃ!
と、騒ぎたくなるかもしれませんが、そんな複雑なお話ではありません。
容器に詰め込んだ物質は、互いに押し合って容器の壁と摩擦を起こし、押し上げられたり、押し下げられたりするために、実際の質量と異なる場合があるのです。
ただ、穀物でいっぱいのサイロでは、壁が穀物の重量の一部を支えているため、測定された重量が穀物の真の重量よりも少なくなるというのが一般的です。
では、一体どうしたら実際より重い状態が生まれるのでしょう?
この研究は、シンガポールの南洋理工大学のShivam Mahajan氏とジョージア工科大学のMichael Tennenbaum氏を含む国際研究チームより発表され、論文は米国物理学会の査読付き科学雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に2020年3月27日付けで掲載されています。
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.124.128002
サイロの物理学
サイロと言われてもすぐにピンとこない人もいるかも知れません。農場などに建っている穀物などを入れておく円筒形の貯蔵庫のことです。
今回の研究では、こうした円筒型の容器の中に穀物をいっぱい詰め込んでいった場合、重さはどうなるか? という数値シミュレーションが中心になっています。
もともとこの問題については、1895年にドイツの技術者H.A.ヤンセンが論文を発表していて、穀物などの粒子は、粒子間の摩擦や壁との摩擦によって部分的に浮遊状態になるため、見かけ上の重量が実際より軽くなるということを数学的に示しています。
1923年、ある物理学者チームが、サイロの模型を使ってこのヤンセンの予想を検証し、実際にはサイロへ粒子を充填する方法によっては、粒子が押し上げられて軽くなるだけではなく、壁との摩擦に押し下げられて重くなる場合があり得るという提案をしました。
しかし、この実験はうまく再現性が取れず、そのような下向きに働く逆ヤンセン効果は、これまで明らかにされていませんでした。