- 脳波を読み取りテキスト化する「脳波翻訳」が可能に
- 脳波翻訳の精度は最大97%であり、「心を読む」レベルに相当する
ほんの数年の間に、音声認識の技術は急激に向上しました。
多くの人がスマホに触ることなく操作したり、他言語の音声を一瞬で翻訳したりしています。
しかし、これらの音声翻訳が子供の遊びのように思えるほど高度な技術革新が、すぐそこまで迫っています。
なぜなら、カルフォルニア大学サンフランシスコ校の脳神経外科医エドワード・チャン氏らの研究チームが、脳波を読み取りテキスト化するAIを作成したからです。
しかも、その精度は最大97%にもなります。
研究の詳細は3月30日、「Nature Neuroscience」誌に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41593-020-0608-8
脳波パターンから言語を読み取る
研究の発端は、4人のてんかん患者の症状の監視でした。
彼らには脳内インプラントが装着され、発作が起きた時の脳活動が計測されていました。
この時、研究チームは副次的な実験として、患者たちにいくつかの定型文を声に出して読んでもらい、その時の脳活動を記録しました。
言葉は、脳からの信号によって実現するものです。
例えば、「さ:sa」という言葉を発する時には、「s」という子音と、「a」という母音の発声が組み合わされています。これら特有の発声や口の動きは脳の信号によってもたらされます。
ですから、言葉を発する時の脳活動を分析するなら、実際に声に出さなくても、脳波から言葉を抽出できるはずです。
実験の音声データは、ニューラルネットワーク(脳機能の特性をコンピュータ上で表現したもの)に送られ、パターンが分析されました。
次に、脳活動パターンを学習させた別のニュートラルネットワークを用いて、脳波から話そうとしている言葉を予測させました。
その結果、この脳波翻訳システムは、実際に脳波から言語を抽出し、テキストに翻訳することができました。
しかも最高の状態では、脳信号からテキストに翻訳する際の単語エラー率はわずか3%。
この結果は、「人の心を読むAIを手に入れた」と言っても過言ではないでしょう。