コウモリは数多くのウイルスを保持しています。特に最近では新型コロナウイルスの宿主だったとも言われ、マイナスのイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし、進化生物学者たちにとってコウモリは生物の進化を研究するための貴重な存在です。コウモリは動力飛行が可能な唯一の哺乳類だからです。
コウモリだけが動力飛行を身に着けることになった理由は、実は未だ明らかになっておらず、科学者たちはその解明に注力しています。
5000万年前からコウモリは、コウモリである
「コウモリはどこから来たのか」という疑問を解決するためには、コウモリやそれに類する化石を調査し、そこから理解を得る必要があるでしょう。
既知で最古のコウモリの化石は、5000万年前に遡ります。
オニコニクテリス(Onychonycteris)は新生代始新世初期の約5250万年前に生息したと考えられており、完全な化石が発見されています。
しかし、現在のコウモリの前肢には親指だけに爪がありますが、オニコニクテリスは前肢のすべてに爪を持っています。
また、現代のコウモリは反響定位(音の反響によって周囲の状況を把握すること)の能力を持っていますが、オニコニクテリスはその力がありません。
進化動物学者たちは、こうした現代コウモリとの違いを、「進化の過程」と捉えていますが、それでも、オニコニクテリスはコウモリの一種として分類されます。
つまり、5000万年前に遡ってもコウモリはコウモリであり、動力飛行の由来も解明できないのです。