終わらない計算 無限級数
無限級数は、学校で苦しんだ覚えのある人が多いかもしれません。
これは特定のルールに従って計算を繰り返していき、目的の値に近づいていく計算方法です。
もっとも代表的で簡単な無限級数は、無限等比数列です。
例えば前の数字の半分の数字を無限に足し合わせていった場合、その数字はどうなるでしょうか?
$$S=1+\dfrac {1}{2}+\dfrac {1}{4}+\dfrac {1}{8}+\dfrac {1}{16}+…$$
「…」以降この繰り返しが無限に続きます。エクセルのオートフィル機能みたいに、決まった法則で変化する数を延々と反復コピーして計算するのが無限級数なのです。
では、この計算を延々と繰り返していくと、答えはどんな数になるでしょうか?
正解は2です。これは図にするととてもわかりやすくなります。
こうしてみると、1つ前の数字の半分を無限に足し続けていくと、どんどん2に近づいていくことがわかると思います。これを答えが収束するといいます。
無限級数は、決まった手順の計算をとにかく繰り返せば繰り返すほど精度の高い答えに収束していきます。
円周率πについても、その値を正確に導くための無限級数が存在しています。ただ、これには色んな無限級数が考案されていて、それによって計算に必要な負担も異なっています。
もっとも有名な円周率を求める無限級数は、ライプニッツ級数と呼ばれるものです。
$$ 1-{\frac {1}{3}}+{\frac {1}{5}}-{\frac {1}{7}}+{\frac {1}{9}}-\cdots ={\frac {\pi }{4}}$$
これは奇数の逆数を交互に引いたり足したりしていく無限級数で、πを4で割った値に収束していきます。
ただ、これは見た目はとても単純で使いやすそうですが、非常に効率が悪い計算です。効率が悪いというのは、目的の値に答えが収束するまでに必要な計算回数がとてつもなく多いことを意味しています。
ライプニッツ級数ではπを10桁分( 3.1415926535…)正確に計算するだけでも、この手順を100億回繰り返す必要があると言われています。
これは極単純な一部の例を示したものですが、結局コンピュータの行っているπの計算は、こうした無限級数のアルゴリズムによって行われています。
最近はもっと優れたバージョンのアルゴリズムも作られていて、家庭用のパソコンでも無意味にすごい桁数のπが計算できるようになっています。
現在有名なのは「y-cruncher」というソフトです。2020年1月にはTimothy Mullican氏がこのソフトを使い、自分のパソコンで50兆桁まで計算することに成功しました。そして彼は、これによってπの桁数計算のギネス記録を更新したのです。
これは誰でも利用可能なソフトなので、興味のある人はMullican氏に続いてπを計算してみましょう。
ちなみにMullican氏は、50兆桁の計算に10カ月かかったそうです。
さすがにそんな桁は計算できなくても10億桁くらいなら家のパソコンでも数分で計算できるといいます。ただ、生成されたテキストファイルは容量が大きすぎて開こうとすると普通のパソコンではエラーになるとか…。
まあ、πは3.14でいいですよね。