- 宇宙飛行士の細菌叢と宇宙ステーションに残る細菌の比較研究が行われた
- 宇宙ステーション内の細菌と宇宙飛行士の皮膚細菌を調べたところ55%近くが一致した
- 無菌の宇宙では飛行士の細菌に影響されて、ステーションに誰がいたのか特定できてしまう
もし人類が宇宙の奥深くまで旅する時代が来た場合、長期間の宇宙生活がどんな影響を与えるのか知る必要があります。
宇宙ステーションで生活する宇宙飛行士は、数々の実験を宇宙で行うだけでなく、自分自身に起こる変化も研究対象にされます。
宇宙は基本的に無菌の空間のため、宇宙ステーションは非常にクリーンな環境です。
今回の研究では、そんな宇宙の暮らしが、宇宙飛行士の微生物叢にどんな影響を残しているか、また逆に宇宙ステーション自体にどんな影響が与えられるかを調査しています。
その結果は、かなり興味深いものになったようです。
宇宙で起こる細菌叢の変化
2019年にネイチャーの科学雑誌『Scientific Reports』に掲載された論文では、半年から1年の間宇宙ステーションに滞在した9人の宇宙飛行士の腸内細菌叢の変化について報告しています。
そこでは、意外なことに無菌に近い環境の宇宙で、腸内細菌叢が多様化していたことがわかりました。
研究者の多くは、腸内細菌叢の多様性は低下するだろうと予想していました。予想に反したこの結果は、NASAが取り組む宇宙ステーションでの食事の多様化の成果だといいます。
NASAは宇宙ステーションで200以上の飲食物が利用できるよう努力しており、宇宙飛行士は自宅で食事するよりも多様な選択肢を与えられているのです。
腸内細菌叢が多様化すれば、一般的に病気などを回避できる可能性が高くなります。
しかし、皮膚の細菌叢を検査したところ、一貫している傾向として、プロテオバクテリアが減少していることがわかりました。これは主に土壌中に存在する細菌で、宇宙ステーションが清潔であることが現象の原因と考えられます。
このように宇宙は無菌状態のため、注意を払っていなければ細菌は減少していく傾向があるようです。
SF映画などで地球へ攻めてきた宇宙人が、地球の汚染や細菌の影響であっさり自滅してしまうオチがありますが、長く無菌の宇宙を旅してくれば、環境の変化に極端に弱くなってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。