宇宙ステーションに住む細菌たち
今回の研究者たちが注目したのは、宇宙飛行士の細菌叢だけではなく、宇宙ステーションに居着いている細菌たちがどうなっているか? ということでした。
無菌に近い宇宙ステーションでは、逆に宇宙飛行士たちの影響を受けてステーション内の細菌叢が変化するのではないか、と考えたのです。
実際これは、想像以上にはっきりとした変化を与えるものでした。
研究者たちは、宇宙ステーションの壁や床から採取した細菌の痕跡を見れば、どの宇宙飛行士が宇宙ステーションに滞在したか判別できるほどだといいます。
研究チームは、ミッション前、ミッション中、ミッション後の宇宙飛行士の口、鼻、耳、皮膚、唾液から綿棒でサンプルを採取し、また宇宙ステーションの8つのポイントから、同様に細菌のサンプルを採取して、それらを分析しました。
すると両者の細菌には一致するパターンが見つかったのです。
さらに研究チームはショットガン・シーケンシング法という長いゲノムを分析する手法を使って、細菌サンプルのDNA分析を行いました。
この方法では、細菌の全ゲノム情報を解析して、どんな菌がどれくらい存在するかや、どのような遺伝子をどれくらい持つかということが分析できます。
その結果、宇宙飛行士の細菌叢と宇宙ステーションの細菌叢では、55%が一致していたというのです。これは特に飛行士の皮膚サンプルとよく一致していました。
宇宙ステーションの最近は、そこで過ごす宇宙飛行士の細菌叢に大きく影響され、それは宇宙飛行士が地球へ帰還した後も最大で4カ月持続するとわかったのです。
現在のところ、これは一人の宇宙飛行士を対象に行った研究ですが、非常に興味深い結果を示しています。
将来宇宙で犯罪が起こった場合は、指紋の代わりに細菌で犯人が特定される…なんてことも起こってしまうかもしれませんね。
この研究は、米国ローレンス・リバモア国立研究所とNASAの研究チームの共同で発表され、科学と医学分野の一次研究論文を扱うオープンアクセスの査読付き学術雑誌『PLOS One』に4月29日付けで掲載されています。