生殖幹細胞の培養方法を確立する
研究チームは過去に、ニジマスから取り出した生殖細胞をヤマメに移植することで、ヤマメからニジマスを誕生させる異種間代理母システムを構築しました。
しかしその方法では、元となる生殖細胞を取り出す魚(ドナー)を殺さなければならず、クロマグロなど絶滅が危惧されている魚類に適応するのはコストがかかりすぎてしまう問題があります。
そこで研究チームは長年、精子や卵子の元となる生殖幹細胞の培養に取り組んでいました。
精子や卵子は分裂して増殖することはできませんが、元となる幹細胞ならば分裂・増殖が可能だと考えていたからです。
しかし既存の培養方法では、細胞の増殖スイッチを入れることができず、効果的な増殖ができていませんでした。
そこで研究者は、試験管内部で精巣に酷似した環境を創り出すために、精巣内で生殖幹細胞を取り囲んで哺育している「セルトリ細胞」をニジマスから取り出し、シャーレの底に敷き詰めてみました。
さらに、使用する培養液地をヒトのES細胞用のものをベースに改良し、最後にニジマスの血漿を1~3%の濃度で添加しました。
すると、生殖幹細胞はシャーレ上で次々に分裂し、32日間で100倍に増殖しました。