- 花粉を混ぜ込んだ溶液をバブルガンで射出する「シャボン玉授粉」が誕生
- シャボン玉一つにつき、約2000粒の花粉が含まれる
優秀な送粉者であるミツバチは、植物の繁殖にとって欠かせない存在です。
ところが、温暖化や農薬の過剰使用、土地開発による生息地の減少により、ミツバチの数は年々減ってきています。
ミツバチの仕事を補うため、筆を用いて一つ一つ受粉を行ったりもしましたが、手間やコストがかかりすぎました。
そこで今回、北陸先端科学技術大学院大学(石川)の研究チームは、「シャボン玉」を用いた画期的な人工授粉法を新たに開発しました。
メルヘンチックな新手法ですが、世界を飢餓から救う鍵となるかもしれません。
シャボン玉一つにつき花粉2000粒!
シャボン玉受粉を発明したのは、同大学の都 英次郎准教授(40)。息子さんと近所の公園でシャボン玉遊びをしていたときに閃いたそうです。
方法もいたってシンプルで、シャボン玉溶液に花粉を混ぜ込み、それを農作物に向かって射出するというもの。しかし、その実現には、花粉の活動が維持できる溶液や濃度を見つけなければなりません。
そこで研究チームは、まず、シャボン玉が花粉を落とさずに運搬可能であることを顕微鏡で確認した後、市販で購入できる5つの溶液をテストしました。
その結果、化粧品などに使われる「ラウラミドプロピルベタイン」という溶液が、最適であると判明しています。この溶液は、花粉が花にくっついた後、花粉から伸びる花粉管の成長を促していたのです。
さらに研究チームは、花粉の活性化を促進するため、カルシウムやカリウムを加えて溶液を改良しました。
実証テストでは、市販のおもちゃと同じ性能のバブルガンを用いて、ナシの花に花粉入りのシャボン玉を射出しています。シャボン玉一つにつき、約2000粒の花粉が含まれるそうです。
その結果、95%の花が受粉に成功し、シャボン玉が花粉の媒介物として機能することが証明されました。
一方で、手動のバブルガンでは、まだ手間や時間がかかりすぎてしまいます。
そこで研究チームは、ドローンにバブルガンを搭載して、決まったルートを飛行するようプログラムしました。
ドローンを高さ2メートルの位置から毎秒2メートルで飛行させ、目標の花にシャボン玉が命中するかテストしました。結果、90%の確率で花粉の命中に成功しています。
まだ、強風や降雨下での射出など解決すべき点もありますが、ドローンやバブルガンの性能を高めることで効率的な人工授粉が実現するでしょう。
近い将来、シャボン玉が降り注ぐ畑や果樹園の光景が日常的に見られるかもしれません。
研究の詳細は、6月17日付けで「iScience」に掲載されています。
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(20)30373-4
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/62610
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