梅雨の時期は天体観測がしにくいですが、晴れ間が出た20時頃に空を見上げると、2つの明るい星が目につくはずです。
黄色味を帯びた南の空高くにある星が、うしかい座のアークトゥルス。全天で3番目に明るい星です。
1番目がオリオン座のシリウス、2番目が北半球では高度が低すぎてほぼ見えない、りゅうこつ座のカノープスとなるので、実感として2番目に明るく感じるかもしれませんね。
アークトゥルスから高さをそのままに、東にある白っぽい明るい星が、こと座のベガ。全天で5番目に明るい星になります。七夕の織姫星なので、7月7日に確認してみてはいかがでしょうか。
また、ベガは夏の大三角を構成する星の1つなので、ほかの2つ、はくちょう座のデネブとわし座のアルタイル(彦星)を探して、三角形をつくってみてくださいね。
それでは、星のソムリエ®が選ぶ、今月の星の見どころベスト3【2020年7月】をご紹介します。
Best3.28日(火)~30日(木)頃:みずがめ座δ(デルタ)流星群が極大
今年の極大日は月明りが邪魔にならないのがポイント。上弦を過ぎたくらいなので、夜半頃(0時過ぎ)には沈みます。
23時頃、みずがめ座は南東にあるのですが、右隣にあるのはやぎ座。みずがめ座δ流星群だけでなく、やぎ座α流星群もこの頃極大になると予想されています。
ほかの星座との位置関係は、こちらが参考になりそうです。
でも、みずがめ座とやぎ座って暗い星ばかりで、空を見てもどこにあるかわからないんだよね……という方もご安心を。
さそり座~土星まで、実際の写真だとこんな感じになります。木星、土星はとても目立ちますね。
今の時期、夜空を見ていて一番明るい星は木星と思って良いでしょう(金星は夜明けなので除く)。
南の空に明るく並ぶ2惑星の左に、やぎ座、みずがめ座があるので、「並んだ明るい2つの星の左隣を見る」と覚えれば簡単ですね。
ところで、みずがめ座流星群って、みずがめδ(デルタ)北群(NDA),みずがめδ(デルタ)南群(SDA),みずがめι(イータ)北群(NIA),みずがめι(イータ)南群(SIA)の4つがあります。δ群とη群は、流星群のもととなるチリをまき散らす彗星(母天体といいます)は別なので、極大となる時期が異なります。
それぞれの放射点と、目印になる星の位置関係は以下。
今回メインとなるのは、δ(デルタ)南群(SDA)。上の図で赤色に印をつけた部分にフォーカスしてください。
3位にした理由
Good!:今年は観測条件がいいし、極大日以外でも余裕のある気持ちで気にしてみると良さそう。
Bad!:特になし。あえて言えば、記念に流れる瞬間を撮るのは難しいかも?
Best2.4日(土)~16日(木)最大光度頃の明けの明星の金星が、おうし座のヒヤデス星団に接近
5月の「星の見どころ」で、4月にあった「金星とプレアデス星団の接近」についてレポートしています。
その際に掲載した写真の左側にV字の星並びが写っていますが、それがヒヤデス星団です。双眼鏡で見るとよくわかりますよ。
明けの明星の金星は、7月8日にマイナス4.5等の最大光度になると言われています。観測時間は午前3時頃。金星は7月4日にヒヤデス星団のV字に入ってきて、16日で抜ける感じになるので、8日はV字の中に入っています。
また、ヒヤデス星団の中にある、おうし座の赤い1等星、アルデバランともっとも接近するのを見たい場合は7月12日を狙いたいですね。日曜日の早朝なので、観察しやすいでしょう。
Good!:観測チャンス日が多く、良い感じの写真が撮れそう。
Bad!:梅雨明けには厳しい。連日早起きするのも難しいので、天気予報をまめにチェック推奨です。また、双眼鏡のご用意を。
Best1.23日(木):明け方の空に全惑星が一堂に会する
国立天文台によると、7月下旬の夜明け頃、西南西の空に沈みかけている木星と土星から、海王星、火星、天王星、金星と続き、最後に東北東の空に昇り始めた水星が並ぶように見えるそうです。
太陽が昇っていない夜間にすべての惑星が地平線の上に見えるのは、非常に珍しいとのことですよ。
ただ、低いところにある星を見るのは難しいので、ピンポイントの時間を狙わず、早めの時間に木星と土星の観測を始め、昇ってくる惑星を順に追っていくのが良さそうです。
観測できる期間は長いのですが、23日は水星が西方最大離角で高度が高く、休日で観測しやすそうなのでオススメです。
ただ、水星よりも月を見たいという場合は、6日から19日までとなるので、早めの時期に見てみましょう。
1位にした理由
Good!:レア度が高いので。ちょうど連休の時期なのと、梅雨明けも期待できる。
Bad!:天王星を見るには条件が良くても双眼鏡、海王星は望遠鏡が必要。ただ、このあたりに出ている……という感慨には浸れそう。
以上、今月の星の見どころベスト3【2020年7月】でした。
先月の「ベスト3」実際にどう見えた? レポート
さて、6月の「星の見どころベスト3」の観測結果について、ご報告します。
残念ながら、やはり梅雨の時期にて雨や曇りばかりで連敗という結果に。
Best3にあげた、「パンスターズ彗星」ですが、「ひしゃくですくわれた彗星」の観測が狙える6月11日付近はずっと天気が悪く、ようやく写真がとれたのは6月17日。
柄じゃないほうの、ひしゃくの端から3番目の星あたりにあると思われるのですが。
空がもやっぽいこともあり、北斗七星の写真は撮れたけれど、彗星はわからず。
Best2にあげた、「夕方の水星が、今年最大高度に。金星に頼らずに探そう」というのも、連日西の空の低いところに雲があって無理でした。
そして、Best1の「部分日食」。瀬戸内海地方や日本海側など見られた地域も多かったですが、関東はあいにくの天気。
日食の始まりでこんな感じ。極大時間はもっと厚く雲がかかり、晴れに向かうことはありませんでした。
ただ、東京でも太陽が一瞬だけ顔を出した際、星のソムリエ®の先輩が撮影に成功した写真がこちらです。
なお、次回は10年後と言われますが、期待すべきは日本で皆既日食が観測できる2035年です。148年ぶりの本州でのチャンスなのだとか。能登半島、長野、前橋、宇都宮、水戸などの都市の一部で見られるそう。
今月は木星と土星が観測ベストシーズンです。7月14日には木星が、そして7月21日には土星が「衝」を迎えます。地球を挟んで太陽と反対側の位置にくる状態のことです。
「衝」のとき、惑星は日没頃に昇ってきて、夜明け頃に沈みます。つまり、観測しやすい時間に高い位置に昇り、一晩中見られます。それに、地球と距離が近いので、もっとも明るく大きく見えます。
観望会イベントなど、この二大惑星を望遠鏡で見られる機会も増えると思うので、足を運んでみてはいかがでしょうか。
Reference: 国立天文台(1, 2), 星空年鑑2020, 日食ナビ / written by ofugutan
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