臓器の年齢は曖昧。モザイク現象が鍵となる
しかし、細胞レベルで臓器を検査していくと、臓器の寿命や年齢はもっと曖昧なものだと分かります。
臓器を構成する個々の細胞は定期的に消耗し、交換を必要とします。多くの細胞は時間経過と共に完全に再生しますが、その速度は大きく異なります。
例えば赤血球は約4か月間静脈や動脈を循環しますが、活発な腸の細胞はもっと短命であり数日で入れ替わる必要があるのです。
これらに対し、生まれてから入れ替わりがほとんどない長寿細胞も存在します。脳細胞(ニューロン)がそれであり、基本的にはニューロンと私たちの年齢はほぼ同じです。
このように「ある臓器(肝臓など)は定期的に新しくなり、別の臓器(脳)は古いまま年齢を重ねていく」と考えられてきました。
しかし、米国ソーク生物学研究所のマーティン・ヘッツァー氏らの2019年の研究で、マウスの肝臓やすい臓には、ニューロンと同じくらい古い細胞が含まれていることを発見しました。
健康な成体マウスの肝臓細胞には、マウスの年齢と同じくらい古い細胞が含まれており、「加齢モザイク現象(短命細胞と長寿細胞の混合)」を引き起こしていたのです。
長寿細胞は加齢によって劣化するため、これらが脳以外にも存在しているという事実は、臓器の老化メカニズム解明の手掛かりとなるでしょう。
臓器の寿命の個体差もこれらの要因が関係しているかもしれません。