貝塚の調査
研究チームが着目したのはこの地域でよく獲れていた魚「ベニダラ」です。
魚の骨には、耳石という年輪のような骨があり、そこから魚がどの様な環境にいたのか、どのような時期に獲られたものかなどが推測できるのです。
成長の鈍化している冬などの季節だと年輪の層は薄くなり、暖かく豊かな季節は年輪が厚くなります。
研究チームは、貝塚からこのベニダラのサンプルを255個収集しました。また現代で漁獲されるベニダラも比較サンプルとして69個集めて分析を行いました。
すると完新世中期の貝塚から見つかったベニダラは、温暖な時期に獲られたものであることがわかりました。この貝塚からは寒冷期には見られない鳥の骨なども見つかっていて、この時代が温暖だったことを示しています。
しかし、それ以降の時代では、ベニダラが非常に寒い時期に獲られた痕跡があり、寒冷化が進んでいた可能性があります。5000年前から4000年前あたりの時代は、ちょうど新氷期と目される時代と一致しています。
そして、こうした寒冷期には、狩猟民の漁業への依存度が増していたこともわかりました。
寒冷化で、地上の食料が十分ではなかったため、この時代の狩猟民は釣りで食べ物を確保していたのでしょう。
そして、漁業への依存は完新世後期(2500年前)あたりから減少していきます。
これは再び地上の温暖化が進んできたことで、豪雨の増加や、氷河が融解して海に流れ込むなどの要因で海水の塩分濃度が下がり、植物プランクトンが影響を受けて海洋生物が減少したためと考えられます。
こうしてパタゴニアの先住民族は、漁業を諦め地上の動物たちを追って移動していったようです。
古代の人々も環境の激変にうまく生活を変化させることで対応してきたようです。
私達の生活も、大規模な気候変動を機に、大きく様変わりする時が来るのでしょうか。
この研究は、チリのマガジャネス大学の考古学研究者Jimena Torres氏を筆頭著者として、フランスの考古学者との研究チームより発表され、論文は『The Journal of Island and Coastal Archaeology』に6月1日付けで掲載されています。
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/15564894.2020.1755393?journalCode=uica20
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