- 完新世には激しい気候変動が起こっていたが、先史文明の狩猟民族はこれにうまく対応していた
- 新たな研究は、南米パタゴニアに残る貝塚などから気候変動に応じてどの様に食事が変わったかを分析
- 寒冷化が進むと漁業への依存度が高くなり、温暖になると陸生の動物を追いかけたことを明らかにした
現代は激しい気候変動の潮目にあたっていると思われます。
気候変動は天候だけでなく、さまざまな生態系の変化も引き起こし、地域の環境を激変させていきます。
氷河期が終わり人類が本格的に繁栄を始めた完新世(約1万年前から現代)は、非常に気候変動の激しかった時代でもあります。
先史文明の狩猟中心の生活をしていた人類は、一体この時代の環境激変にどのように対応していたのでしょう?
新たな研究は、南米パタゴニアで見つかる貝塚の調査から、そうした古代の狩猟民の生活の変化などを調査し報告しています。
気候変動に対応してきた古代の人類の生活は、もしかしたら新たな気候変動の時代を迎える現代の人々にとっても有益な情報をもたらしてくれるかもしれません。
パタゴニアの狩猟民族
パタゴニアはチリとアルゼンチンの国境に位置する、南米大陸最南端の地域です。
この地域には、およそ6500年以上前から多くの狩猟民族が生活していました。彼らの食生活は、ゴミ捨て場にあたる貝塚の調査から、かなりよくわかっています。
パタゴニアは南から来る冷たいフンボルト海流(ペルー海流)が大陸沿岸の温かい海水に流れ込むことで、非常に海洋資源の豊富な地域です。
海水は地上と異なり冷たい方が栄養が豊富です。日本も寒流が流れ込む潮目にあるため、海洋資源が豊富ですが、パタゴニアも似たような環境が整っています。
貝塚の調査から、パタゴニアの狩猟民は、主に漁業と、海鳥やアザラシなどを獲って食べていたことがわかっているそうです。
しかし、完新世の時代は、氷河期が終わり比較的温暖だった時代ですが、5500年前から4500年前の間には新氷期という寒冷期も存在していたと考えられ、気候変動の激しい時代でした。
こうした気候変動や環境変化に彼らはどのように対応していたのでしょうか?
今回の研究チームは、パタゴニアに残る完新世中期(6500年前)から完新世後期(2500年前)にかけての4つの貝塚を調査して、彼らがどのように生活を変化させて環境変化に対応していたかの調査を行ったのです。