- 工具で切断できない究極の素材が開発される
- 新素材のもつ階層構造により、切削工具の力を工具自身へと転化できる
- 新素材は切削工具の力を受けることで粒子状に変形し、サンドペーパーのように工具を摩耗させる
チェーンロックは盗難から自転車やバイクを保護しますが、工具によって簡単に切断されてしまいます。
英国ダラム大学工学部のステファン・シニシェフスキ助教ら研究チームは、グラインダーや電動ドリルで切削できない素材「プロテウス」を開発しました。
プロテウスは自身を傷つけようとする工具を逆に破壊することで、切削作業を無効化できます。
自然界にある防御メカニズム「階層構造」から着想を得る
自然界に存在するものは、極端な負荷から自身を保護するための階層構造をもっています。
例えば、グレープフルーツは10mの高さから落下しても果肉が損傷することはありません。それは、グレープフルーツの果皮がもつ外層棒状細胞と内層柔細胞の作用によります。
また、アマゾンに生息するプラルクーと呼ばれる魚は、鱗が階層的な設計になっているため、ピラニアの歯に抵抗できます。鱗の外層には波状の溝があり、溝の間隔がピラニアの三角歯の間隔と位相が異なっているため保護されるのです。
つまり、自然界の生体は単純な硬度だけを保護としているのではなく、形状や性質、相互作用を利用しているのです。
シニシェフスキ氏らは金属に階層構造を持たせることで、金属が持つ本来の硬度以上の保護作用を生み出すことに成功しました。