菌を利用した新たなシールド技術
菌を利用する放射線シールド技術には、もう1つ菌の持つメラニン色素だけを抽出して素材に練り込むという方法があります。
菌が放射線を吸収し、エネルギーに変換しているのはメラニン色素によるものです。
これを宇宙服の生地や、プラスチック製の素材に混ぜれば、放射線の遮断効果を高められる可能性があります。
こうした方法は、薬品に混ぜることで、まるで日焼け止めのように放射線を防げるようになる可能性も秘めています。
最近では米国のジョンズ・ホプキンス大学の研究者が、同じくチェルノブイリで発見された放射線を食べる真菌「Cryptococcus neoformans :クリプトコックス・ネオフォルマンス」をプラスチック製の素材に混ぜ、ISSに送って遮断効果を調査する実験を行っています。
菌類を用いた放射線シールドには優れた可能性があります。
もっとも素晴らしい点は、わずか数グラム用意するだけで、菌は自己複製して増えていくのでコストがかからないということです。
現在使われているステンレス鋼などのシールドは、地球から宇宙へ打ち上げるために、非常に技術的な困難と高いコストがかかっています。
また、太陽フレアによって放射線シールドは大きなダメージを受けます。こうした際の修復も大きな問題ですが、菌類で作られたシールドは、ほんの数日あれば自己修復して元に戻ることが可能です。
研究者たちが語る21cmの菌の層は、分厚すぎて若干疑問も残りますが真菌の放射線シールドは非常に明るい可能性に満ちた未来技術になりそうです。
この研究は、現在はノースカロライナ大学の学生となったXavier Gomez氏とGraham Shunk氏らの研究チームより発表され、現在は未査読の状態で生物系のプレプリント・リポジトリ「bioRxiv」にて公開されています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.07.16.205534v1
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