量子もつれの複雑性は未来を固定する性質がある
現実世界で複雑なシステムを組み立てるときには、初期の条件設定の違いが将来組み上がるシステム全体を大きく変えるという、初期鋭敏性が存在します。
そのためもし過去干渉によって初期条件が書き換えられてしまえば、必然的にシステム全体も全く別物になるのです。
この初期鋭敏性のことを標準的な言葉にしたものが、バタフライ効果と言えるかもしれません。
子供時代のヒトラーを見ることで歴史を大きく変えるかもしれないのです。
ですが量子世界では、そのような効果が起こらないことがわかりました。
情報にダメージを与える観測を行ったとしても、そのダメージは現実世界のように拡大されないため、有用な情報を簡単に回復できたのです。
研究者たちは、量子の世界は、僅かな衝撃で別方向に倒れてしまうドミノのような繊細な束ではなく、逆に観測されていないもつれが多いほど、未来を維持する力があると推測しました。
再びヒトラーの例で例えるならば、量子世界ではヒトラーに少し干渉しても、他の量子もつれの存在がその干渉を抑え込み、ほぼなかったことにできるのです。
この事実は、古典物理学における初期鋭敏性やカオスの概念と、量子力学における初期鋭敏性やカオスの概念が全く異なることを意味します。
量子の世界では、現実世界より気軽にタイムスリップできるようですね。
研究内容はアメリカ、ロスアラモス国立研究所のBin Yan氏らによってまとめられ、7月24日に学術雑誌「PHYSICAL REVIEW LETTERS」に掲載されました。
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.125.040605
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なんのこっちゃ?