- 天の川銀河の中心を高速公転する星S4714を発見
- S4714は現在最速の秒速24,000kmであり、光速の8%にあたる
- 同グループのS4711は最短の軌道周期で公転している
天の川銀河の中心には、太陽の約400万倍の質量をもつ巨大ブラックホール「いて座A*(エー・スター)」があります。
これまでの観測では、太陽の周りを地球が公転するように、いて座A*の周りを公転する複数の恒星が確認されていました。
そしてドイツケルン大学の天文学者であるフロリアン・ペイスカー氏ら研究チームは、それらの中から最速で周回する恒星S4714を発見しました。
観測によるとS4714の公転速度は光速の8%にも及びます。
天の川銀河の中心を高速公転する星たち
いて座A*は光を吸収するほどの強い重力をもつブラックホールです。
この重力は周囲の恒星にも及ぶため、いて座A*周辺の星たちは非常に強い力で絶えず内側に引っ張られていることになります。
そして重力に対抗する力は恒星の公転によって生み出されます。公転速度が大きければ大きいほど強い遠心力(外向きの力)が発生するので、高速公転することにより均衡が保てるのです。
こうした仕組みにより、ブラックホール「いて座A*」の周囲にある恒星は、光と比べられるほどの速度を有しています。
加えて公転軌道は楕円型で、中心も偏っているため、いて座A*との距離は一定ではありません。この距離は速度にも影響するので、恒星の位置や軌道、速度が注目されています。
さて、数々の研究と観測の結果、これまでの最速は恒星S62の光速10%とされていました。
ところがペイスカー氏の最近の観測によると、S62の現在の速度は光速の6.7%とのこと。
そして同時に5つの新しい恒星S4711~S4715が観測され、その中のS4714が現在最速の光速8%だと判明したのです。