不可能が可能になった瞬間
鍵となったのは、電流を1方向のみに流す抵抗器(ダイオード)でした。
このダイオードを上の動画のように回路に「2つ」組み込むことで、グラフェンのランダムなブラウン運動から生じる電力を一方通行にすることが原理的に可能になり、結果として直流電流を発生させたのです。
また、ダイオードを使って電流の流れを制限することは、供給される電力を減らすのではなく、逆に増やしていたことまで判明しました。
ダイオードによる抵抗の変化率が回路に追加の電力をうみだすというのは、にわかには信じられませんが、研究チームは確率論的熱力学(確率熱力学)という新しい物理学の分野を使用して、謎の電力増加の存在を証明しました。
確率熱力学とは、ブラウン運動など、わずかなゆらぎが無視できない小さな世界における熱力学を扱う分野であり、今回の謎の電力増加のように、古典的なキッチリとしたエネルギー収支だけでは説明がつかない問題が説明可能です。