方向は単離された細胞でも存在した

イギリス、ジョンイネスセンターのジョルディ・チャン氏は集合説に否定的な一人でした。
チャン氏は、植物の方向性はバラバラになった単一の細胞でも保持しており、細胞間の連携は調整に過ぎないと考えていたのです。
チャン氏は仮説を証明するにあたって、BASLと呼ばれる極性タンパク質に目をつけました。
BASLは植物の気孔に多くみられるタンパク質であり、葉の根元側に偏ることが知られています。
チャン氏は遺伝子組み換えを行い、BASLが細胞内部で緑色に光るように調整すると共に、植物の身体から細胞を単離し、他の細胞との連携を絶ちました。
すると興味深いことに、単離された細胞内部においても、BASLは特定の方向に偏っていることが判明したのです。
また単離された細胞を培地で育てた結果、BASLの偏りと細胞の成長方向は一致していました。
この事実は、植物の細胞は単独であっても自分自身の成長方向を認識していることを示唆します。
多細胞生物は確かに細胞同士が協調して生きていますが、その協調は中央集権的な支配だけではなく、個々の細胞の独自性を上手く調整しているに過ぎないという面もあったのです。


























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