悪意や不道徳は悪臭と結びついている
悪意や不道徳な行いがもたらす精神的な嫌悪感は、どの五感と結びついているのでしょうか? 痛みなのか、それとも悪臭なのでしょうか?
その謎を解くため研究者たちは、被験者となったボランティアたちに対して、不道徳かつ悪意を感じる状況を体験してもらい、脳の反応を測定することにしました。
具体的な手段として用いられたのは「トロッコ問題」に代表される不愉快なジレンマを、脳の活動を測定するMRIの内部で考えてもらう方法です。
トロッコ問題では、上の図のように暴走する電車の先に5人の人間がおり、間もなく全員が轢き殺されます。しかし路線の分岐点を操作することで、犠牲者を1人に減らすことが可能です。
5人の人間があなたの親兄弟であり、1人の人間が愛する妻や夫であった場合、葛藤はより激しく、感じる悪意や嫌悪感は、より激しいものになるかもしれません。
被験者にはトロッコ問題以外にも、様々な悪意や不道徳さを感じる課題に結論を出すように求められ、さらに不快感をあおるために、自らの判断が正しかったのかどうかを自己評価させられました。
このとき研究者は被験者の脳の反応をMRIで測定しながら、悪意や不道徳による生じる脳の活動パターンを記録します。
そして悪意や不道徳な経験が、続いて経験する痛みや悪臭に対してどのように影響するかを調べました。
結果、悪意や不道徳な経験は、臭いの感度に影響を与え嫌悪感を引き起こした一方で、痛みに対する影響はみられませんでした。
この事実は、悪意や不道徳が悪臭と強く結びついている事実を示します。