人間の精神は5感と結びついている
悪臭がもたらす嫌悪感は、私たちの生存にとって必須なものです。食べ物や飲み物が悪臭を発している場合、その食べ物は高い確率で腐って内部に毒素を蓄えています。
そのため人間を含めた多くの動物は、悪臭に対する嫌悪感を生まれながらに備えており、腐った食べ物を避けることができます。
一方で、近年の研究により、様々な精神的な活動が、体が感じる五感と結びついていることがわかってきました。精神的な痛みや苦痛、恐怖は、脳に痛みに似た反応を発生させるのです。
ですが、精神的に負の印象をもたらすケースは実に多様であり、全てのネガティブな印象が、痛みに変換されるわけではありません。
特に悪意や不道徳な行いといった、直接的に身体や生命の危機に関連しないものの、嫌悪感を感じる場合は、判断が難しくなります。
ある研究では、嫌悪感もまた、痛みに関連していると述べる一方で、他の研究では嫌悪感は悪臭に関連していると結論しており、結論は出ていませんでした。
痛み派と悪臭派が大きく対立する理由は、2つの感覚が神経学的にも大きく異なるからです。
痛みは相手から「食べられる」危機を避けるためのシステムである一方で、悪臭がしているかの判断は、こちらが「食べる」ときに働く仕組みです。
そのため痛みと悪臭がもたらす不快感は、似ているようで最も遠い感覚であり、痛み派と悪臭派の対立もより激しくなっています。
中には「悪意や不道徳が起こす嫌悪感は、痛みも悪臭も同時に発生する」という折衷案的な説もありますが、確実な証明はなされていません。
しかし今回、スイスのジュネーヴ大学の研究者たちが行った実験により、長年の論争に決着がつく可能性がみえてきました。