黄鉄鉱の形成が酸素を開放した
この問題にはヒントとなる現象があります。
海洋鉄は火山から出てくる硫黄と結合して黄鉄鉱を形成することがあるのです。このプロセスでは酸化鉄が、大気中に酸素を放出します。
そのため重要なのは、酸化鉄の形成と黄鉄鉱の形成のうち、どちらのプロセスが勝っていたのかを突き止めることでした。
これを検証するために、シカゴ大学の大学院生ハード氏とドーファス氏は、エジンバラ大学と協力して新技術を開発しました。
それは鉄の同位体の微小な変化を測定していき、鉄が黄鉄鉱へ変化する経路がどういうものかを完全に理解するものです。
この研究では、硫黄の化合物を作り出す実験を繰り返していたので、実験室に卵の腐ったような匂いが充満してしまい、同僚の理解を得るのに苦労したと、ハード氏は語っています。
同僚を悩ませただけの甲斐はあったようで、この成果を元に彼らがオーストラリアと南アフリカで採取された26億年前から23億年前の岩石を分析したところ、多くの酸化鉄を抱えていた海でも、特定の条件下では多量の黄鉄鉱が形成されて、大気を形成するのに十分な酸素が海洋から放出されていた、という可能性が明らかになりました。
これは多くの変動する要因が伴った複雑な問題です。そのため全容が解明されたとは言えませんが、少なくとも大酸化イベントにつながる、一部の問題が解決されたのです。
宇宙で生命を探す助けになる研究
今回の研究成果は、太陽系外惑星の研究においても重要な助けになるものです。
初期の地球も酸素を多く含んだ大気は持っていませんでした。それがどのようにして生命が活動可能な状態になったのか、その詳細を理解することは、何千もある系外惑星から、探索すべき候補を絞り込むためのヒントになります。
他の惑星でも同じようなプロセスが行われているなら、その証拠を探すことで地球のような酸素の増加した生命の誕生する惑星を見つけ出せるかもしれません。
酸素は光合成を行うバクテリアなどの登場で一気に地球を覆い始めたと言われていますが、海洋の錆びた鉄の存在や火山の硫黄も大きな要因になっていたようです。
まだまだ明らかになっていない謎が地球には多く存在しているのですね。