血液成分とアルツハイマー病の関係を解き明かす
アルツハイマー病は、脳の内部にアミロイドベータと呼ばれる毒性の高い異常なタンパク質が蓄積することが原因であることが知られています。
アミロイドベータの蓄積が進むと脳細胞を損傷して細胞死を引き起こし、記憶障害、不眠や徘徊、性格の変容がはじまります。
しかしアミロイドベータを検出する従来の方法は、脳しょう(脳脊髄液)を直接採取するため、手術リスクが高い高齢者にとって安易にできる方法ではありません。
一方、近年の研究により、アルツハイマー病を発症した患者の血液の分析が進み、いくつか特徴的な成分を検出できるようになってきました。
ただこれまでの研究は、個々の血液成分とアルツハイマー病の因果関係を示すだけであり、実用性に欠けていました。
そこでスウェーデン、ルンド大学の研究者たちは既存の成果を元に、アルツハイマー病に関連すると考えられる複数の要因(血液成分)を同時に比べる「多変量解析」を行いました。
多変量解析は人気商品の強みや弱みを調べたり、売上や顧客数を分析して新店舗の位置を決めるといった、複数の変数がからむ問題を解き明かすために用いられる手法です。
分析を行った結果「リン酸化タウ」および「ニューロフィラメント軽鎖」という2つのタンパク質の測定が、最もアルツハイマー病の予測に役立つことを発見します。
ただこの時点では、結果は計算の産物に過ぎません。
そこで研究者たちは、次の段階に踏み出しました。