- 分子シミュレーションによって、極海に生息する魚が凍らないメカニズムを解明
- 不凍糖タンパク質の疎水部分が氷の成長を抑える
- 氷の成長を抑える技術で、食品などの冷凍保存への応用が期待
南極や北極の魚たちは、氷の下でも平気で泳いでいます。彼らはなぜ、氷点下の海の中でも凍らないで泳げるのでしょうか。
南極や北極の海の温度は約−2度。このとき、日常生活で使う水は凍りますが、海水は凍りません。それは、海水に含まれる塩分によって通常の水よりも凝固点が下がるためです。また、凝固点の低下は塩分などの溶質の濃度に比例します。
しかし、魚は血液の濃度が海水より低く、人間と違って体温調整ができないのに凍りません。そのメカニズムについて、信州大学の研究で解明することに成功しました。
一般的に、氷点下に生息する魚が凍らないのは、不凍糖タンパク質という凝固点を低下させるタンパク質をもつためといわれてます。しかし、不凍糖タンパク質のどの部分が、どうやって氷に付着して氷の成長を止めているかはわかっていませんでした。
研究者らはその謎を解明するため、不凍糖タンパク質を表面上に置き、氷を成長させる分子シミュレーションを行いました。すると、不凍糖タンパク質が水になじみやすい「親水部分」と、なじみにくい「疎水部分」にはっきり分離しており、その内の疎水部分が氷の表面に吸着することがわかりました。これは、氷の表面に薄い膜が張られるということを示しています。
その「疎水部分」の吸着の弱さから、不凍糖タンパク質は氷の上をゆっくりと動きます。そして動きながら氷の成長部分を選択して吸着し、氷の成長を止めているのです。これらの特徴は、寒冷地の昆虫などが持つ同類のタンパク質と大きく異なり、魚が持つ不凍糖タンパク質独自の振る舞いとのこと。
今回の発見により、氷の成長を抑える技術を活かした、細胞や食品の冷凍保存などへの応用が期待されています。
via: 信州大学 , eurekalert/ text by ヨッシー
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