研究チームの撮影したアイスランドの氷河。
研究チームの撮影したアイスランドの氷河。 / Credit: Eric Boyd
fungi

太陽も酸素もなしで光合成?「水素ガス」から栄養をつくる微生物を発見!

2020.12.24 Thursday

凍てついた氷河の下、そんな場所にも微生物たちは生存しています。

日も差さず、酸素もない、そんな場所で彼らはどうやって暮らしているのでしょう?

12月21日に科学雑誌『PNAS』で発表された新しい研究は、氷河の下にいる微生物たちが太陽光を必要とせずに、水素ガスと二酸化炭素で光合成のような作用を行っていると報告しています。

この発見は、地球上だけでなく凍てついた他惑星の環境でも生物が暮らしていける可能性さえ示しています。

>参照元はこちら(英文)

 

Montana State University https://www.montana.edu/news/20705/hydrogen-supported-life-beneath-glaciers-the-subject-of-msu-team-s-recent-publication ,
Lithogenic hydrogen supports microbial primary production in subglacial and proglacial environments https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2007051117

氷河の下で生きる微生物たち

研究の筆頭著者であるモンタナ州立大学のエリック・ダナム氏。
研究の筆頭著者であるモンタナ州立大学のエリック・ダナム氏。 / Credit:Montana State University

今回の研究を行ったのはモンタナ州立大学の大学院生エリック・ダナム氏です。

ちなみに彼の指導教官はエリック・ボイド氏、そして研究チームにはウィスコンシン大学のエリック・ローデン氏が参加しています。

「ああ、君もエリックなのか」なんて会話があったんじゃないかと想像してしまいますが、そんな偶然にもエリックだらけとなった研究チームが調査したのが、氷河に住む微生物です。

氷に覆われた場所は、どう考えてもすべての生物にとって住みにくい環境です。彼らはどうやって生存を維持しているのでしょうか?

疑問点を解消すべく、チームエリックは世界中の氷に覆われた地域から収集されたデータを調査しました。

今回の研究で使われたのは、カナダとアイスランドの氷河から採取された堆積物のサンプル。微生物たちは氷河とその下の岩盤の間で生活しています。

チームが考えたのは、それがどのような相互作用をしているかということでした。

そして調査によって、堆積物の中から水素ガスによって生存をサポートされている微生物が見つかりました

しかし、最初は氷河の下の水素ガスが、どこから来ているのかわかりませんでした。

調査を進めると、氷河の下のシリカ(ケイ素)に富んだ岩盤が、氷の重さによって小さな鉱物粒子に粉砕されるとき水素ガスが発生するとわかりました

鉱物微粒子と融解した氷河の水が結合すると、水素ガスが生成されるのです。

さらに、氷河の下の微生物群は、化学合成というプロセスを通じて、水素ガスと二酸化炭素を組み合わせて、有機物(バイオマス)を生成することができることもわかりました。

この化学合成は、植物が行う光合成によく似ています。植物は太陽光と二酸化炭素を使いバイオマスを作っています。

ただし、今回の微生物はこの化学合成に太陽光を必要としていませんでした。

この事実は、一体何を意味するのでしょうか?

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