「中性化した電子の塊」とは何か?
絶縁体が電気を通さない最大の原因は、マイナスの電荷をもつ電子が動かないからです。
しかし、実験結果は電子の移動を示しています。
これら相反する事実を統合するために、研究者たちは「電子が塊となって自己組織化」した特殊な状態(準粒子)を想定しました。
近年の量子科学の進歩により、複数の粒子がまとまって新たな性質をもつ1つの粒子としてふるまう事例が数多く報告されています。
これらの準粒子は自然界に存在する基本粒子とは異なる挙動をとることが知られおり、既存の物理学で説明できない現象をうみだしています。
例えば準粒子「エニオン」などがそれにあたります。
エニオンは電子の塊によって構成されますが、エニオン1個が運ぶ電荷は1電子の三分の一です。
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また通常の磁石はどんなに砕いても必ずN極とS極にわかれますが、「磁気単極子」とよばれる準粒子は片方のみを持ちます。
さらに粒子と反粒子の性質が等しい特殊な準粒子である「マヨラナ粒子」は現代物理学では最も研究が盛んな分野となっています。
準粒子はどの物理現象にも表れる一般的な粒子とは異なり、特定の条件を備えた物理現象でのみ生成されるという、条件依存的な性質を持ち合わせています。
今回、研究者たちは相反する事実を統合する新たな準粒子として最有力候補としたのは、「中性フェルミ粒子」でした。
この中性フェルミ粒子は電子の集まりで構成されるものの、相互作用の結果、電荷は中性(プラスでもマイナスでもない)となっています。
マイナスの電荷をもった電子は絶縁体の内部を流れることはできませんが、中性のフェルミ粒子(準粒子)ならば、自由に移動することができます。
つまり絶縁体で電気を流していたのは、電子そのものではなく、電子があつまって特殊化した準粒子だというわけです。