損傷した神経線維の再生を刺激する、新しい麻痺治療
現在、世界中の540万人が脊髄損傷による麻痺を抱えています。
この麻痺は、事故により神経線維(軸索)が損傷し、脳と筋肉の間で信号を伝達できなくなることで生じます。
現在軸索を再生することはできないので、患者は一生麻痺したままで生きていかなければなりません。
これまでの研究では、損傷部位をバイパスすることで、一部の四肢機能を回復させようとしてきました。
しかし新しい研究では、再度、不可能だと考えられてきた軸索の再生を試みました。
損傷した軸索をハイパーインターロイキン-6(hIL-6)というタンパク質で刺激して再生させようとしたのです。
hIL-6とは神経細胞の再生を刺激するために微調整された合成タンパク質のことです。
ただし自然界には存在しない特殊な合成物なので、遺伝子工学でしか作ることができません。
そのため研究チームは、「hIL-6を生成するための遺伝子命令をもつウイルス」を作り上げ、脳の運動野に注入。体内で産出させるという方法を試みました。