音楽と脳波に1:1の関係は存在するのか?

近年の脳波分析技術の急速な進歩により、脳は特定の音に対して特有の脳波を発生させることがわかってきました。
音に一定のリズムがある場合、脳波にも同様の周期の変動がみられるのです。
しかし既存の研究はあくまで純粋な「音」に対するものであり「音楽」と脳波の関係が確かめられていませんでした。
音楽は単なる音と比べて複雑な繰り返し構造をもち、個人の気分や感情といった脳のさまざまな部位に影響を与える力があるため、純粋に聴覚にかかわる脳波だけを検出することが困難だったのです。
そこで今回、研究者たちは人間の脳の神経接続を模倣する「ニューラルネットワーク」を搭載したAIに対してトレーニングを行いました。

教材となったのは、20人の人間が12曲の音楽を聴いた時に測定された脳波です。
脳波を測定するにあたっては、聴覚以外の感覚を抑えるために、人間たちは目隠しをされたまま音楽を聴きました。
もしAIが曲名と脳波のパターンに何らかの関係を学習していれば、次回からは脳波のデータのみで対応する曲名をあてられるはずです。
AIの学習が済み、実験はいよいよテストの段階へと移行しました。
脳波データのみで他人が聴いている音楽を特定することに成功

AIの学習が成功しているかを確認する手段は、極めてシンプルでした。
データを提供した20人にそれぞれ再び、音楽(先の12曲)を聞かせるヘッドホンと脳波を測定するヘッドギアをつけてもらい、脳波だけがAIに送られます。
そしてAIは脳波のデータだけを頼りに人間が聴いている曲のタイトルを当てるのです。
実験を行った結果、AIは85%の精度で人間の聞いている曲を当てられることがわかりました。
この結果は、人間の脳は特定の音楽に対応する特定の脳波を発し、AIがそれを読み取れることを示します。
しかしこの85%という高い正解率には「同じ人間の場合のみ」という条件がついていました。
同じ音楽を聴いているときでも個人によって脳波のパターンが大きく異なるために、AIは学習の対象外とされた人間の脳波からは、曲名をあてられなかった(正解率10%未満だった)のです。
この結果は、同じ音楽でも個人によって評価が全く異なるという現実と一致します。
全ての人間に共通する脳波パターンを探す

今回の研究により、個人の脳波をもとに、その人間の聴いている音楽を特定できることが示されました。
同じ人間においては、特定の音楽は特定のパターンの脳波を発生させていたのです。
この結果について研究者たちは、音楽や音楽に付随する感情もまた「単なる電圧変動」に過ぎないと述べました。
研究者たちは次のステップとして、個人の範囲を脱することを目指しています。
つまり特定の音楽に対して、全ての人間に共通する脳波パターンを見つけていくという大きなチャレンジです。
この試みが成功した場合、今度こそ本当に、脳波の測定だけで他人が聴いている音楽を特定できるようになるかもしれませんね。




















